2015年8月21日 平成27年環境厚生委員会

「市町村国保への財政支援策について」

◯安藤委員

市町村国保への財政支援策について伺います。
法改正で、2018年度より保険者は都道府県と市町村となり、国保を共同運営することになりました。
そこで、市町村国保の都道府県単位化に関する国の説明会の開催状況と説明の概要についてお伺いします。

◯田中高齢福祉保険課長

国は、本年5月29日に公布されました持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律の概要等について説明するため、全国6ブロックにおいて、都道府県及び希望する市町村を対象として説明会を開催しました。
北海道・東北ブロックについては、7月21日に仙台市で説明会が開催され、本県からは県及び6市町村の担当者が出席しました。
国からは、財政支援強化策、都道府県と市町村との役割分担、保険料率の決定や賦課・徴収に関する事項等の国民健康保険制度改革の概要に加え、新たな制度の詳細及び運用については、今後、国と地方代表が協議するための組織である国保基盤強化協議会等において、さらなる検討を行う予定であること等の説明があったところです。


◯安藤委員

7月21日に仙台市で行われた説明会に青森県と6市町村が参加したということですが、この説明会において、自治体などから要請、あるいは要望などがあったか伺います。

◯田中高齢福祉保険課長

7月21日の国の説明会では、国からの説明のほか、質疑応答の時間があり、細かい内容の質疑応答はありましたが、県や市町村から要望という形の申し出はありませんでした。


◯安藤委員

要望はないようですが、集中した質問の内容はどういうことだったのでしょうか。

◯田中高齢福祉保険課長

これは本県または本県の市町村からということではございませんが、今後、詳細について、国保基盤協議会等においてさらなる検討を行っていくということとなっており、それから県及び市町村が準備をしていくということになりますので、国と地方の協議、あるいは詳細な制度設計を早目に進めてもらいたいというような声が多く上がったと伺っております。


◯安藤委員

今回の都道府県単位化というものは、いわゆる国保を医療費の適正化の道具にするという捉え方もされているところです。
次の質問ですが、今年度に措置される約1,700億円の新たな財政支援強化策の内容について伺います。

◯田中高齢福祉保険課長

平成30年度から市町村国保の財政運営等が都道府県単位化されることに伴い、国は市町村国保に対する財政支援の拡充等を実施することにより、国保の財政基盤の抜本的な強化を図ることとしています。
市町村国保では、低所得者の加入者の割合が高いために、中間所得層の被保険者の保険料負担が相対的に重くなるといった構造的な問題がありますので、これまでも低所得者の多い市町村への財政支援を通じて中間所得者層の保険料負担の軽減を図るために、保険料の軽減対象となる低所得者数に応じて市町村に交付している保険基盤安定制度のうち、保険者支援分といたしまして財政支援を実施しているところであります。
国では、この低所得者対策を強化するため、保険者支援分として新たに約1,700億円の財政支援を行うこととしたところであり、具体的には保険料軽減対象者数に応じて算定する額について、国が2分の1、県が4分の1を市町村に交付することとなっております。


◯安藤委員

約1,700億円の交付額については、いつごろ決まるのでしょうか。

◯田中高齢福祉保険課長

この交付額の積算は、国の指示に基づき、例年11月以降に市町村が行っております。


◯安藤委員

11月以降に判明するということですが、全国的にはこの1,700億円の保険料が入るという見込みのもとで、例えば京都市では14億円の歳入超過分が見込まれるということや、福島県いわき市では2億5,000万円の歳入増額見込みということで、保険料を下げる自治体が出ています。保険料引き下げに活用することも可能であるという事例と思うのですが、この認識についてと青森県内の動向について伺います。

◯田中高齢福祉保険課長

今年度の財政支援の拡充分ということで増額されるということでありますので、一定の財政基盤の安定化に寄与するものと考えられますが、基本的なことを申し上げますと、その使途については保険者である市町村が決定するということになります。一方で、例えば平成25年度決算によりますと、保険料負担の緩和及び単年度決算の補填等のために全国規模では約3,500億円超、県内では約22億9,000万円余りが一般会計から繰り入れされているという現状もあります。国保財政の健全性の確保の観点からすると、こうした状況にある市町村では、法定外繰り入れの解消を図っていくということも大きな検討課題であるのではないかと考えています。


◯安藤委員

法定外繰り入れの解消にも使われるだろうということはもちろん想定されますが、自治体の考え方によっては保険料引き下げに活用するということもあり得るという認識でよろしいでしょうか。

◯田中高齢福祉保険課長

重ねて申し上げますが、基本的には保険者である市町村が、その使途を決定するということになります。


◯安藤委員

保険料、あるいは税の軽減対象となる低所得者数に応じた財政支援制度に係る平成26年度の市町村への交付実績と今年度の交付見込み額について伺います。

◯田中高齢福祉保険課長

平成26年度は保険基盤安定制度の保険者支援分として、県内市町村に対して国が約6億5,600万円、県が約3億2,800万円、合わせて約9億8,400万円を交付しております。
なお、先ほども答弁しましたが、交付額の積算は国の指示に基づいて例年11月以降に市町村が行うということでありますので、今年度の交付見込み額について、現時点では不明となっております。


◯安藤委員

低所得者数に応じた財政支援制度以外に県が支弁している交付金等には、どのようなものがあるのか伺います。

◯田中高齢福祉保険課長

県から市町村に交付している交付金等としては、先ほど説明した保険基盤安定制度の保険者支援分以外に財政調整交付金、保険基盤安定制度のうち保険料軽減分、高額医療費共同事業負担金、特定健康診査・特定保健指導負担金の4つの制度がございます。
そのうち、1つ目の財政調整交付金については、産業構造、所得水準等の違いによる市町村間の財政力の格差を勘案して交付している普通調整交付金と医療費適正化、保険料収納率の向上及び健康づくり等の国保の運営の安定化を図るための取り組み状況等を勘案して交付する特別調整交付金がありまして、総額としては保険給付費等のうち9%を交付するものです。財政調整交付金の平成26年度の交付実績については、普通調整交付金が約78億2,600万円、特別調整交付金が約5億3,300万円、合わせて約83億5,900万円となっております。
2つ目の保険基盤安定制度のうちの保険料軽減分でございますが、市町村が低所得者の保険料を軽減した場合に軽減額の4分の3を交付するものでございます。県の交付金の平成26年度の交付実績については約48億9,000万円となっております。
3つ目の高額医療費共同事業負担金でございますが、小規模保険者の運営基盤の安定化等を図るため、国民健康保険団体連合会が事業主体となり、市町村から医療費に応じた額を拠出金として徴収し、高額な医療費が発生した場合に交付する高額医療費共同事業について、市町村の拠出金の4分の1を負担するものであります。県の負担金の平成26年度の交付実績は、約9億4,400万円となっております。
4つ目の特定健康診査・特定保健指導負担金でございますが、市町村が特定健康診査等に要する費用のうち、対象とされたものの3分の1を負担金として交付するものでございます。県の負担金の平成26年度の交付実績については約1億8,100万円となっております。


◯安藤委員

都道府県調整交付金というのがあるわけですが、この交付金で制度改定による影響を少なくする調整が可能になったと理解していますが、この点について、県はどのような認識をされているでしょうか。

◯田中高齢福祉保険課長

国民健康保険の負担の考え方ですが、大きく分けまして、50%を保険料とその他の公費負担で賄っていて、残りの50%を国及び都道府県の調整交付金で賄うという形になっております。調整交付金というのは、片方の保険料にかかわらない部分の50%にかかわるものであり、額もその50%中の9%分と定めがありますので、保険料率の改定等には影響しないものと考えています。


◯安藤委員

次に、県は保険料の軽減を図るための財政支援を行うべきと考えますが、県の考えを伺いたいと思います。

◯田中高齢福祉保険課長

先ほど各種の県負担を答弁しましたが、平成26年度において、財政調整交付金として約83億5,900万円、保険基盤安定制度負担金として約52億1,900万円、高額医療費共同事業負担金として約9億4,400万円、特定健康診査・特定保健指導負担金として約1億8,100万円、これら合わせますと、合計で約147億300万円の支弁を行っているところであります。
県としては、今後とも法令の規定に基づいて財政責任を果たしていくと考えております。


◯安藤委員

御承知のとおり、大変高い国保の保険料で滞納者も大変ふえているという状況下にあります。各自治体の保険料引き下げのために、ぜひ青森県としても支援をしていただきたいと思います。現在、147億円以上の財政支援額があるということですが、あらゆる方法で市町村に対する軽減策の支援を行っていただきたいと思います。
例えば、福島県では都道府県単位化で拠出金の持ち出し額が交付金を上回る拠出超過自治体への超過分全額を補填するということを検討しているそうであります。このようなことも一つの事例となるわけですが、青森県としてもこのような福島県の事例などにも学びながら、財政支援の拡大を行う必要があると思いますが、いかがでしょうか。

◯田中高齢福祉保険課長

市町村の保険料の引き下げに向けて基本的に取り組むべきこととしては、歳入確保と歳出抑制の2つになるわけですが、歳入確保に向けては収納率の向上、歳出抑制ということで申し上げますと、医療費の適正化等を図るといったことが基本的なことであると考えております。県としては、先ほども申し上げましたとおり、法令の規定に基づいた負担を行っていきたいと考えています。


◯安藤委員

2011年度の実績なので少し前になりますが、青森県では国保滞納世帯数が5万2,831件、差し押さえ件数が5,052件、延べ差し押さえ金額が16億6,560万9,354円という状況です。青森県がいかに滞納世帯を生むような環境にあるか、そして滞納に対して差し押さえをしてでも国保料の支払いに強い働きかけをするという実態がこの数字にあらわれています。先ほど質問した約1,700億円の新たな財政支援強化策以外に、もう一つの国の財政支援として1,700億円というのがあります。この中で保険者努力支援制度創設というのがあり、医療適正化や保険料・税収納率アップなどに努力した市区町村に交付するという新たな条件をつくろうとしています。こういうことによって青森県がさらに資格証明書発行や滞納処分の差し押さえを含め、県がこうした指導を強化するということが起こってくるのではないかという危惧があるのですが、この点についてどのような考えでいるのでしょうか。

◯田中高齢福祉保険課長

まず、平成30年度から国が支援するとしている1,700億円のうち、保険者努力支援制度につきましては、詳細はこれから国が制度設計していくということで、現段階ではまだ不明であります。
また、差し押さえ等に関しての県の対応ということでありますが、平成30年度に都道府県化されて以降も、賦課徴収に関しましては市町村が実施していく事項となっておりますので、基本的には市町村の所管にかかわる事項であるかと考えます。


◯安藤委員

しかし、市町村からの納付金を青森県が徴収するという体制になっていくわけで、徴収率の低いところに対する指導というのは強化されるのではないかと危惧されるわけです。そして、先ほど来の答弁の中で、短命県返上のことや、がんになってもしっかりと医療機関にかかれば命を救うことができるのだという認識を県民に持っていただきたいという発言もありましたが、実際に国保保険料の滞納者が保険証を取り上げられ、病気になったりがんが進行しても、医者にかかれずに救急車で運ばれたときには命を落とすという事例もあるわけです。こういう県民が置かれている実態と国保の都道府県化に伴って青森県の短命県克服という、相反する事態が発生するのではないかと思われますが、この辺について、県民の命をどう守るのかという立場でしっかりと県が対応していただきたいと思います。このことについて健康福祉部長からコメントをいただければと思います。

◯一戸健康福祉部長

どういう視点で健康保険を捉えるかというところで、見方が変わってくると思うのですが、やはり健康保険制度自体、保険料を中心とした制度でありますので、保険料をみんなで納めていただいて運営していくというのが基本であります。
今回の国保制度の改正というのは、保険税規模の小さい市町村では、もう賄い切れないということで財政運営が都道府県に移ってきますが、移ってくる際に、市町村が国保を担ってきたときの構造的な問題である超過負担に対する一般会計からの補填などの問題を、都道府県化した後でも同じように引きずるようでは、制度改正した意味がなくなってしまうわけであります。そういうことを考えると、今回の制度改正を機に、しっかりと保険制度であるということを前提に県民の皆さんには分かっていただく必要がある。それから、今回の制度改正の中で、低所得者対策としては公費での減免制度自体は対象も広がるなど、拡充されているわけです。そういった減免制度を適切に利用していただきながら、保険料の収納率を市町村が上げていただくということは必要だろうと思っております。
制度の詳細設計はこれからになりますので、ここで仮定の議論を積み重ねても、実にはなりませんが、県としては市町村が国保の財政運営を担っていたときの矛盾がそのまま都道府県に持ち上がることのないような制度設計にしていきたいと考えております。


◯安藤委員

これからの市町村の国保財政の運営が、新たな局面の中で苦しさを強いられるのではないかと思うわけです。現在も一般会計からの繰り入れをして、何とか滞納者を少なくするため保険料を軽減させる取り組みもされている自治体があるわけで、一挙にそういうものをなくしてしまうというのではなく、そういう手法も一つの手段として保険料軽減に各市町村が取り組めるような門戸を開いた指導といいますか、働きかけを県にしていただきたいと思います。ぜひ国保の対象者が安心して医者にかかれるような体制になるよう、県としても市町村とともに取り組みを強化していただきたいと思います。
次の質問に移ります。
介護保険制度における新しい総合事業への移行について伺います。
これまで介護保険の対象となっていた要支援1ないし2の利用者のサービスが市町村に移行されることになりました。平成29年4月までには全ての市町村において介護予防給付の一部と介護予防事業が新しい総合事業に移行することとなりましたが、県内市町村の移行の予定はどうなっているのか伺います。

◯田中高齢福祉保険課長

平成26年6月の介護保険制度の改正により、介護予防訪問介護及び介護予防通所介護並びに介護予防事業について、平成29年4月までに市町村が実施する地域支援事業の中の新しい介護予防・日常生活支援総合事業に移行することとなっております。
県内市町村においては、地域のニーズや実情に応じて移行時期を判断しておりまして、県が平成27年1月に行った調査においては、平成28年度中の移行予定が7町村、平成29年度からの移行予定が33市町村となっております。


◯安藤委員

要支援高齢者等が必要なサービスを受けられなくなることを懸念していますが、市町村が新しい総合事業を適切に実施できるよう、県としてどのような支援を行うのか伺います。

◯田中高齢福祉保険課長

新しい総合事業では、移行時点において、介護予防給付として実施されている介護予防訪問介護や介護予防通所介護のサービスを受けている要支援者については、移行後においても、その状態等を踏まえて、市町村のケアマネジメントで必要性が認められれば、移行前の介護予防給付に相当する訪問型サービスや通所型サービスを引き続き利用できる仕組みとなっております。
これに加え、新しい総合事業では、単身高齢者や支援を必要とする軽度の高齢者のさまざまなニーズに応えていくため、NPO、民間企業、住民ボランティアなどの多様な担い手による多様なサービスの提供が可能となります。例えば、訪問型サービスにつきましては、介護事業所等が提供する身体介護等の専門的サービスだけではなく、日常の掃除、洗濯、ごみ出しなどの生活支援サービスを必要とする方にはNPOや住民ボランティア等が利用者ニーズをきめ細かに酌み取り、多様なサービスを提供することが可能となるというものであります。
県としては、市町村がこの総合事業に円滑に移行できるよう、今年度、生活支援・介護予防サービスの担い手の創出に向けたモデル事業や地域におけるニーズとサービスのマッチングなどを行う生活支援コーディネーターの養成研修などを実施することとしているほか、市町村が地域包括支援センターを交えて開催する意見交換会に職員を派遣して、必要な助言を行っているところであります。


◯安藤委員

市町村に移行された後の利用料については、どのようになるのでしょうか。

◯田中高齢福祉保険課長

地域の実情に応じ、多様な主体により多様なサービスが提供されることから、サービス内容に対応した利用料を市町村が設定することとなります。従来の給付から移行する既存サービスに相当する訪問型サービスや通所型サービスについては、国が定めるガイドラインに従い、要介護者に相当する介護給付における利用者負担割合を下限として市町村が設定することとなります。また、住民主体の生活支援サービスにつきましては、ガイドラインによりますと、例えば実費のみの利用料とすることにより、利用料が今の段階よりも低くなることも考えられます。


◯安藤委員

サービスは今までとほぼ同じサービスが受けられる、あるいは今までにはなかったサービスも受けられるということ、市町村に移行することで、利用料は市町村が決めるということですが、利用料金がはね上がる事態は考えにくいということでよろしいのですか。

◯田中高齢福祉保険課長

ただいま答弁申し上げたとおり、従来の給付から移行するサービスというのは、基本的に現在のサービスの内容と同じようなサービスということがガイドラインの規定に基づき定められております。一方で、生活支援サービスですが、これは市町村の実情に応じてサービス内容も異なってくるかと思いますが、この設定の考え方は利用をなるべく低く抑えるといった取り組みも可能となっております。


◯安藤委員

県内の40市町村がそれぞれの自治体の持つ力の差によって、これまでと同じようなサービスを継続できるかどうか不安になるわけですが、その辺についてはどうでしょうか。

◯田中高齢福祉保険課長

介護保険のサービスについても、基本的には介護保険料と公費負担の関係というのはどこの市町村であっても同じでありますので、市町村の財政力によってそういった差が出てくることは想定しておりません。


◯安藤委員

繰り返しの質問になりますが、サービスの内容について、市町村によって、今までのレベルのサービスを提供できなくなるという事態は生じないのでしょうか。

◯田中高齢福祉保険課長

重ねて申し上げますが、これまでの給付により実施していた介護サービスに関しては、同等のサービスに移行していくということになっていますので、市町村による差異は生じないものと考えております。


◯安藤委員

次に、介護保険制度における利用者負担の見直しについて伺います。
平成27年8月から、一定以上の所得のある人はサービスを利用したときの負担割合が2割となりましたが、具体的にはどのような人が対象となるのか伺います。

◯田中高齢福祉保険課長

介護保険制度においては、介護サービスを利用する場合に費用の一定割合を利用者に負担していただくという制度になっております。この利用者負担について、これまでは所得にかかわらず一律にサービス費の1割となっていましたが、介護保険制度をさらに持続可能な制度とするため、平成27年8月から第1号被保険者のうち一定以上の所得のある方にはサービス費の2割を負担していただくということとされました。
具体的に2割負担となる方ですが、65歳以上の方で合計所得金額が160万円以上の方となっております。ただし、合計所得金額が160万円以上であっても、実際の収入が280万円に満たないケースや65歳以上の方が2人以上いる世帯で収入が低いケースがあるといったことを考慮して、世帯の65歳以上の方の年金収入とその他の合計所得金額の合計が単身で280万円未満、2人以上の世帯で346万円未満の場合は引き続き1割負担となっております。


◯安藤委員

限度額にもよると思うのですが、サービス利用による最高額の場合、その1割として、利用者はどのくらい支払っていたのでしょうか。

◯田中高齢福祉保険課長

高額介護サービス費の負担限度額について、区分に従いまして限度額が異なりますが、現役並みの所得者に相当する方がいる世帯の場合は月額で4万4,400円となります。世帯のどなたかが市区町村民税を課税されている場合は限度額が3万7,200円、世帯の全員が市区町村民税を課税されていない場合は2万4,600円、その中でも老齢福祉年金を受給されている方は2万4,600円でありますが、前年の合計所得金額と公的年金等収入額の合計が年額80万円以下の方の場合は個人単位で1万5,000円、生活保護を受給している方の場合は1万5,000円と負担限度額が規定されております。


◯安藤委員

一番最初に発言のあった最高限度額は4万4,400円ということですが、支払うのはこれだけではないですよね。食費とか、居住費というのもそれぞれの条件によって違いますが、ユニット型個室で一番高いのは1日1,960円の利用者の負担額があるわけです。そういうことを考えると、これまでの1割から2割になることで、相当の負担の額となるわけです。
これまでの介護保険料のことを考えてみても、初めて保険料を徴収したのが2000年10月ですが、このときは全国平均1,455円でした。それが2015年3月段階で4,972円になり、弘前市の場合は6,170円とはね上がっています。このまま推移しますと、2025年には全国平均8,000円台になるのではないかと予想されております。このように、保険料も上がり、利用料も、所得によりますが2倍になっていくという中で、利用料の負担の重さから、必要なサービスを受けたくても受けられなくなる事態が生じかねないと思いますが、どのように捉えているでしょうか。

◯田中高齢福祉保険課長

国の広報による全国平均ですが、この2割負担の対象になる方というのは65歳以上の方のうち、所得が上位20%に該当する水準であるとされております。その中で実際にサービスを受けられる方が在宅サービス利用者のうちの15%、特別養護老人ホーム入所者の5%程度であると推計しています。したがいまして、高齢者の方の所得が高水準のほうから20%であるということで、所得に応じた負担をいただくという形の制度改正であろうかと考えております。県としては、各市町村に対して、利用者負担の見直しに関する制度改正の趣旨及び改正内容について、わかりやすい丁寧な周知や説明を行うよう助言していきたいと考えております。


◯安藤委員

市町村へのわかりやすい説明を重ねていくということですが、今後、利用者、高齢者の方、あるいはその御家族の方たちからさまざまな不安とか、実際の利用料について、こんな問題で困っているということが生じているかと思います。そうした方たちへの疑問に答えたり、あるいは相談に応じるという窓口を県に設置するべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

◯田中高齢福祉保険課長

制度の運用に当たっては、直接の窓口である市町村がより身近な団体として住民の方の意見を吸い上げていただけると思うので、その中で助言等が必要で問い合わせがあれば、県から市町村に対することもあろうかと考えております。


◯安藤委員

これから介護保険についてもますます利用しづらい方向になっているわけで、ぜひ青森県としても利用者、あるいは御家族、そして市町村からの意見を十分踏まえながら、国には適切な声を上げていただきたいと要望して終わります。

六ケ所村の再処理工場での廃液漏れ検知計器故障について

◯安藤委員

8月3日付の新聞で、六ケ所村の再処理工場で廃液漏れ検知計器が故障と報じられました。大変衝撃的な記事でした。この件について伺いたいと思います。
再処理工場における安全上重要な機器の故障について、その1つ目は、8月2日に発生した再処理工場の機器の故障について、トラブル発生時の連絡内容と県の対応についてお伺いします。

◯庄司原子力安全対策課長

8月2日に発生した機器の故障について、状況をお答えいたします。
日本原燃株式会社によると、8月2日18時52分ころ、管理区域内となる再処理工場の分離建屋において、高レベル廃液供給槽及び高レベル廃液濃縮缶からセル内の受け皿へ漏えいを検知するA・B2系統あるうち、B系統について、計器異常を示す警報が作動するとともに、A系統は指示値が表示されない状態になり、漏えい検知装置2系統が動作不能ということを同社が判断しております。
また、日本原燃株式会社から、同じく8月2日20時30分ころ、同じ分離建屋内において、安全上重要な機器となる、塔槽類廃ガス処理施設の廃ガス洗浄塔入口圧力計のA、B両系統において、18時53分ころから──これは先ほどの漏えい検知装置の警報が出たのと大体同じ時間帯になりますが──正しい値を示していないということを確認したという連絡を受けております。この事象は、六ケ所再処理工場におけるアクティブ試験等に係るトラブル等対応要領に基づくA情報というものに該当しまして、夜間・休日を問わず、直ちに連絡を要するものでありまして、日本原燃株式会社からは8月2日の19時24分にファクスで県に第一報があったところです。
県の対応としては、この連絡を受けまして、原子力センターの職員を現地に派遣して、六ケ所村の職員とともに安全協定に基づく立入調査を行っております。そこで事業者から状況の説明を受けるとともに、監視制御盤により高レベル廃液供給槽及び高レベル廃液濃縮缶の液位、液面の高さに変動がないこと、廃ガス処理設備の負圧が維持されていること、放射線監視装置によりまして施設内及び施設の敷地境界付近の指示値に異常がないことを確認しております。また、事業者に対しては原因の究明と再発防止を求めているところであります。


◯安藤委員

まず、県の公表のあり方ですが、日本原燃株式会社からそういう情報が入って、現地調査をしたということですが、その時点で速やかに公表すべきではなかったかと思うのですが、公表は6時間経過した後と聞いております。この辺について、どのように考えているのでしょうか。

◯庄司原子力安全対策課長

こういった事象の通報につきましては、県には19時24分にファクスが入りましたが、その後はさまざまな状況を確認して、翌日の1時過ぎに、これらの事象について公表しております。その時点では、県の立入調査の結果というのはまだ出ていませんで、現地に原子力センターの職員を派遣して調査しているという形で公表しております。立入調査した結果については、8月3日の午前中に別途、公表しております。


◯安藤委員

立入調査後の公表はもちろんですが、立入調査をする以前に日本原燃株式会社からそういうファクスが入った時点で、やはり速やかに公表すべきなのではないかと思うのですが、その辺についてはどのようなシステムになっているのでしょうか。

◯庄司原子力安全対策課長

県では、日本原燃株式会社からトラブルの通報ということで第一報のファクスが入りますと、第一報には十分な情報が記載されていないということもあるので、職員が参集して、いろいろと日本原燃株式会社とやりとりして状況をしっかり確認した上で、取りまとめて公表します。我々も、精いっぱい早くやったつもりでしたが、日が変わった後に公表になったということでございます。


◯安藤委員

その点については、新聞にも批判の記事がありました。ぜひ速やかな対応や公表を今後、心がけていただきたいと思います。幾つかこの状況について伺いたいのですが、機器故障に伴い低レベル放射性廃液約50立方メートルの海洋放出が行われたと報じられておりました。放射能濃度は安全協定に基づき定められた3カ月平均濃度を下回るので問題ないということですが、この点について、どのように捉えているのでしょうか。

◯庄司原子力安全対策課長

委員がおっしゃっている低レベルの廃液の放出は、今のトラブルに伴って放出されたものではないということです。このトラブルがあって、さまざまな機器をいろいろ復旧している間に、必要な措置を講じて放射性廃棄物の海洋放出が行われたということだと思います。


◯安藤委員

もしそうであったとしても、低レベル放射性廃液を海洋に放出したという事象について、どのように県としては受けとめているのでしょうか。

◯庄司原子力安全対策課長

再処理工場からは全部、廃棄物の処理をして、気体は主排気筒を中心に、液体は濃度を確認して安全を確認した上で海洋に放出するという、もともとそういう計画になっております。その計画の中での放出と理解しております。


◯安藤委員

そういうことだと、日常茶飯事、こういう事象が起きているのだろうかと思うのですが、そういうことではないのですか。

◯庄司原子力安全対策課長

海洋への放出というのは月に数回、もう少しあるかもしれませんが、そんなに珍しいことではなくて、廃液がたまり、処理をするなど確認した上で海に放流するということは通常行われる行為であります。


◯安藤委員

その月に数回放出されているということは、協定の基準値以上の濃度だったりしたときには、県への報告など、きちんとした対応が求められると思うのですが、この点について、日常的に月に数回あるということは、報告がないということでしょうか。

◯庄司原子力安全対策課長

再処理施設を運営していく上で、海洋放出というのは必要になって行われるものであって、海洋放出で放出される放射能量については定期的に安全協定に基づいて県にも報告があります。また、日本原燃株式会社では月単位でホームページに公表しています。放射性廃棄物には放出管理目標値が液体であれ、気体であれ決められておりまして、それを満足する形で放出しているということです。これまでずっと安全協定に基づいて報告を受けておりますが、放出管理目標値を上回ったということはありません。


◯安藤委員

今回のトラブルの事象の原因ですが、新聞などには落雷が原因ではないかと報じられています。現在、原因究明がなされているかとは思いますが、落雷によってこうしたトラブルが発生することは、今まで聞いたことがなかったものですから、まだ決定ではないでしょうが、日本原燃株式会社の発表について、どのように捉えているのでしょうか。

◯庄司原子力安全対策課長

これまでについて言いますと、六ケ所村の日本原燃株式会社のサイクル施設、東通村の東通原子力発電所とも落雷に起因するトラブルというのは発生したことはありません。今回、日本原燃株式会社では、その当時、六ケ所村では雷が多発しており、複数の機械が同じ時間帯に故障したということで、落雷が原因だろうと推定して、調査を進めている段階であります。


◯安藤委員

本格稼働がされていない時点でこういう事象が起き、大変危惧されるわけですが、落雷によってこういう事象が発生してしまうということは重大なことだと思います。原子力規制庁が今回の機器故障を共通要因により安全上重要な施設等が複数故障した重大な事象と位置づけ、今後の適合性審査の対象とする方針とされているようであります。原子力規制庁もこのような捉え方をしている、やはり大変なトラブルだということで、厳重な対応を求めていかなくてはいけないと思うのですが、県の考え方について伺います。

◯林環境生活部長

今回のトラブルの経過等につきましては、先ほど原子力安全対策課長から答弁したところでございますが、その際にも県としては、今回の事象につきましては、原因究明を行った上で、まずは適切な対応を行うということを事業者にしているわけでありますが、県としても、その原因の究明と再発防止対策というものを求めているところでございます。そして、8月19日に開催されました原子力規制委員会におきまして、原子力規制庁からこの事象は重要な事案と考え、原因究明及び再発防止対策について、新規制基準の適合性審査の中で確認していくという発言もあったようでして、県としても、この審査状況を十分注視するとともに、今後の対応等を見極めていきたいと考えております。


◯安藤委員

それで復旧についてですが、故障した機器の復旧状況についてはどのように捉えてるのか。

◯庄司原子力安全対策課長

事業者からは、通報があった2系統、2種類の計4機器につきましては8月4日までに復旧したことと、これらの4機器以外にも安全上重要な機器である11機器について故障が確認されたが、これらについても8月13日までに復旧したこと、安全上重要な機器以外についても14機器に故障が確認され、それは8月末までに全て復旧する予定であるという連絡を受けております。


◯安藤委員

まだ復旧していない機器もあるわけで、8月いっぱいで復旧見込みということですので、しっかりと復旧状況について確認し、かつ安全を確認していただきたいと思います。そして、その後の経過と今後の県の対応について、部長の答弁もありましたが、それ以外で何か答弁いただけることがありましたらお願いします。

◯庄司原子力安全対策課長

日本原燃株式会社は8月11日に、それまでの調査結果を経過報告として原子力規制委員会に提出しておりまして、県もその内容について説明を受けております。経過報告の中で原因としては、事象発生当時、六ケ所村では多数の落雷が発生していたこと、伝送系の機器に故障が確認されていること、複数の機器で同時に故障が発生していることから、落雷の影響により障害が発生した可能性が高いと考えているとしております。事業者では、これから原因究明を行った上で適切な対策を行うとしておりますので、県としてもその内容を報告するよう求めております。また、国でも重要な事案と考え、これから新規制基準の適合性審査の中で確認していくということにしておりますので、それを注視していきたいと考えております。


◯安藤委員

しっかりとした対応を求めたいと思います。[「そのとおりだ」と呼ぶ者あり]次の質問です。白神山地の保全についてです。7月17日に自然体感歩道オープニングセレモニーというものがありまして、招待をいただきましたので参加させていただきました。今回整備されたうちの一部ではありますが、私も20分ぐらいのコースを散策しました。大変きれいな自然歩道になり、来客者があったときにはぜひ案内したいなと思うような感想を持ちました。そういう中で質問を3点したいと思います。白神体感自然歩道の整備の背景と期待する効果について伺います。

◯佐々木自然保護課長

県では、これまで白神山地において、白神岳自然観察歩道など3つの自然観察歩道の整備とその維持管理を行ってきたところですが、いずれも本格的な登山道であり、一般の来訪者向けとは言いがたいものとなっていました。また、西目屋村の暗門の滝周辺エリアは世界遺産地域内に位置しており、深い谷に囲まれた渓流とブナの森を気軽に体感できる人気のスポットですが、積雪のために遊歩道の開通が遅く、夏休みなどの行楽シーズンにおいても雨の影響により頻繁に通行どめになるなど、安定的な利用が困難な状況にあります。このため、白神山地の魅力や価値を多くの方に体感していただくためには、軽装で気軽にブナ林等を観察することができる歩きやすい歩道等の整備が必要となっていたところです。このようなことから、県では平成26年度において、森林管理署や西目屋村、ガイド団体等を構成員とする検討会を実施して、世界遺産地域内の暗門の滝遊歩道に隣接するブナ林散策道を整備することとしました。今年度、勾配が急な箇所への木道の整備やぬかるむ箇所への敷板の整備などの工事を行いまして、去る7月17日から供用を開始しました。これにより、一般の来訪者が天候に左右されることなく、気軽に白神のブナ林を体感することが可能となり、観光入り込み者数の増加による地域活性化や白神山地の価値の発信による自然保護意識の普及に資するものと期待しております。


◯安藤委員

暗門の滝に行くコースが川沿いの遊歩道でしか行けないと思っていて、そのコースがいろいろな条件で行けなくなったときに、違うコースで楽しめるということを再認識した次第です。ぜひ県内外の方に周知を図っていただきたいと思います。また、トイレはどうなっているのだろうということもありました。先日、私も散策させていただいて、入り口にあるトイレを見せていただきましたが、少し古いトイレです。障害者の方が対応できないトイレでありましたので、こちらは、管理の所管が違うということでしたので、要望の発言だけにします。次の質問ですが、白神山地を保全していくための管理体制について、どのようになっているのか伺います。

◯佐々木自然保護課長

青森県と秋田県にまたがる広さ約13万ヘクタールの白神山地のうち、中心部分の1万6,971ヘクタールについて、22年前の平成5年12月に世界自然遺産に登録されました。その世界遺産地域につきましては、林野庁が所管する森林生態系保護地域や環境省が所管する自然環境保全地域等に指定されているほか、一部が青森県の所管する津軽国定公園、それから赤石渓流暗門の滝県立自然公園に指定されており、国と県が各制度に基づき、自然環境に影響を及ぼす行為を規制して、貴重な自然環境の保護・保全に努めております。また、この世界遺産地域の管理に当たりましては、林野庁、環境省、青森県・秋田県の両県と地元市町村の連絡調整の場として、白神山地世界遺産地域連絡会議を設置し、世界遺産地域管理計画を策定しております。この計画に基づいて、白神山地の利用状況やブナ林を中心とした生態系の状況把握などについて、相互に連携・協力して取り組んでいるとともに、学識経験者による科学委員会を設置して、専門的な知見に基づく指導を仰ぎながら取り組みを進めております。


◯安藤委員

私の知り合いの中にも、ボランティアでガイドをしている方が何人もいます。その方から時々、お話を聞く機会があるのですが、木の伐採が起きているという心配な声を受けたりします。ぜひ白神の自然を守るという立場で関係機関と十分、問題が起きないよう、万全を尽くしていただきたいと思います。3点目の最後の質問ですが、白神山地の保全に向けた県の取り組みについて伺います。

◯佐々木自然保護課長

白神山地の保全に向けて、県では特定公園及び県立自然公園の区域につきまして、自然公園法等に基づく規制を行っているほか、白神山地世界遺産地域巡視員を6名委嘱いたしまして、世界遺産地域を含む白神山地内の巡回・監視を通じて入山マナーの向上や自然保護意識の啓発を行っております。また、白神岳自然観察歩道などの県が整備した自然観察歩道の維持・管理を行って、生態系の保全や入山者の分散化を図りながら、白神の自然を体感できる機会の提供に取り組んでいます。また、西目屋村の白神山地ビジターセンター、あるいは深浦町の十二湖エコ・ミュージアムセンターなどで白神山地の成り立ちや植生等の展示紹介を行ったり、トレッキングや木登り体験会などの体験プログラムを実施するといったことで、一般の方に向けて自然保護意識の普及・啓発を図っております。また、最近報道されておりますが、世界遺産地域周辺においてニホンジカの目撃事例が報告されておりますので、こちらについても国や秋田県等と連携しながら取り組んでいるところです。

◯安藤委員

ぜひ自然保護という立場で、そしてまた、白神山地は県民の共有財産であるということを県民の方々にしっかりと周知を図っていただいて、頑張っていただきたいと思います。