2017年7月21日平成29年農林水産委員会

「県内のため池の整備状況について」

◯安藤委員

最初の質問です。県内のため池の整備状況について伺います。7月5日から6日にかけて発生した九州北部豪雨により多大な被害が発生し、死者は7月18日現在で34人となっています。ここで注目したいのは、朝倉市山田では、川の上流の農業用ため池が決壊し、下流に流木や土砂が流れ込んで被害が拡大した。九州大の林博徳助教は、ため池決壊の原因について、あふれた水がコンクリートで固めていない部分を少しずつ削った可能性があると説明しています。こうした教訓をしっかり生かす必要があると考えまして、県内のため池の状況についてお伺いしたいと思います。
1点目の質問ですが、県内のため池の整備状況についてお伺いします。

◯野中農村整備課長

ため池は農業用水の安定供給、確保や地域の安全性の確保の観点から、老朽化した水門の改修や堤防の補強などの整備を行う必要があります。
県では、10ヘクタール以上の農地に水を供給するため池など規模が大きいものについて整備を行ってきたところであり、記録が残っている昭和53年度以降は、実施中のものを含め、延べ267カ所の整備を行っております。
また、規模が小さいため池については、整備を行う市町村や農家等に対して技術的、また、財政的な支援を行っているところです。


◯安藤委員

1,773カ所中267カ所が整備されているということで、単純計算すると、あと1,506カ所あることになりますが、残っているため池の中で、整備が必要だと認識している箇所はどのくらいかわかっていたら教えていただきたいと思います。

◯野中農村整備課長

ため池につきましては、まず、利用者の方々、管理者の方々からの要請を受けて整備が必要かどうか判断しますが、現時点で、委員がおっしゃった1,773カ所のうち整備済みを除いた中でどれだけ整備が必要かということについて、総括的に把握はしておりません。


◯安藤委員

県が主体的に管理者とともに状況がどのようになっているかという調査などはしていないのでしょうか。

◯野中農村整備課長

県では、東日本大震災の教訓を踏まえまして、ため池の一斉点検を行っております。その中で一定の調査結果は出ておりますけれども、どの施設がどれだけの整備が必要かというような詳細な調査までは全てやっているという状況ではございません。


◯安藤委員

管理者からの要請に基づいて、どのような整備が必要かという点検もされていないのですか。

◯野中農村整備課長

まず、ため池の整備につきましては、管理者、または所有者が整備することが原則となっております。青森県におきまして、県が所有、管理するため池はございませんので、基本的には、市町村、または農業者の団体が管理しておりますので、そういった方々の判断をまず踏まえまして、県としてどういう支援をしていくか、例えば、県が整備を行うのか、それとも管理者が行う整備を県が支援していくのか、そういったところは、管理者からの情報提供、また、要請を受けて検討するということになります。


◯安藤委員

先ほど一斉点検をされたというお話があったかと思うのですが、その一斉点検において、調査が必要な箇所は何カ所ぐらいかというのは把握されているのでしょうか。

◯野中農村整備課長

青森県では、平成25年度から26年度にかけまして、県内のため池の一斉点検を行いました。そして、県内のため池1,773カ所のうち、規模が極めて小さい500カ所を除く1,273カ所について行った結果、239カ所でより詳細な調査を要するという結果が出ております。


◯安藤委員

詳細な調査が必要だということを受けて、管理者が詳細な調査を行っていくということになるわけですね。

◯野中農村整備課長

詳細な調査につきましては、基本的には施設を管理する管理者が行うものですが、県も支援をしていく、場合によっては、県が主体となって調査をすることもあり得る。どこがどういった調査をするかにつきましては、管理者と県が協議して決定していくものと思っております。


◯安藤委員

次に、ため池の管理者の内訳についてお伺いします。

◯野中農村整備課長

県内にあるため池、先ほど申し上げた1,773カ所の管理者の内訳につきましては、市町村が管理するものが44カ所、農業団体である土地改良区が管理するものが148カ所、水利組合が管理するものが515カ所、ため池を使用する農業者等が管理するものが1,066カ所となっております。


◯安藤委員

市町村が管理しているため池が44カ所ということですが、その44カ所の内訳の中で、複数箇所持っている市町村はどこであるかということと、ため池管理者の「その他」というのは、どういう対象を指しているのか、お伺いします。

◯野中農村整備課長

まず、複数のため池を管理する市町村ですが、青森市が4カ所、弘前市が3カ所、五所川原市が2カ所、つがる市が15カ所、深浦町が8カ所、東北町が2カ所、南部町が2カ所となっております。
また、委員がおっしゃった「その他」ですが、先ほど、答弁の中で、市町村、土地改良区、水利組合、そして、農業者等と申し上げましたけれども、そういった水利組合という団体も組織していないような一般の個人の農家であるとか、または、複数の農家で共同管理しているものを「その他」に分類しているということです。


◯安藤委員

管理者が整備をするわけですが、場合によっては、県も支援をするというお話もありました。整備が必要になった場合、「その他」を含め、対応していくことができるのかということがとても重要だと思いますが、整備費用の負担割合については、どのようになっているのでしょうか。

◯野中農村整備課長

ため池の整備につきまして、ため池の状況や規模で費用負担割合は異なってまいりますが、例えば、県が国の補助事業を活用して整備した場合で申し上げると、国が50%、県が30%、残り20%を市町村、土地改良区というパターンが一般的であります。


◯安藤委員

しっかりした土地改良区や組合が組織されているところは、大きな工事だと国の事業を利用してということになると思うのですが、個人や複数の個人で管理していて、整備が必要となったときに、個人の負担が大きいと整備が必要でもなかなかできないという事態も生まれるのではないかと危惧しています。そういう場合の支援の仕方はどのようになっているのでしょうか。

◯野中農村整備課長

ため池は農業用施設の一つで、その所有については、市町村が所有するもの、または農家が所有するもの、さまざまでありますが、基本的には財産ですので、その財産を改良していくということについては、個人財産を改良していくことになりますので、行政がどこまでお手伝いできるかというのはケース・バイ・ケースになると考えられます。
そして、整備の必要な状況に応じて、その都度、個別に県は地元市町村や農家と協議しながら、その程度に応じて必要な整備を行っていく、また、県が必要な支援を行っていくということになっておりますので、一概にどういう支援を県が行うのかというのは、ここで申し上げるのは難しい状況です。


◯安藤委員

そういう事例は過去にあるのですか。

◯野中農村整備課長

ため池の整備の中で、簡易なものにつきましては、現在も国の補助事業を活用して、県も財政的な支援を行いながら、管理の延長で簡易な整備を行っているということは現状でございます。


◯安藤委員

県はこれまでため池の安全管理についてどのように取り組んできたのかお伺いします。

◯野中農村整備課長

ため池は、農業用水を確保するために必要であることに加え、決壊した場合に下流の農地や人家等に影響を与える恐れがあることから、県では、これまでも、ため池の状況把握や必要な改修・補強を行ってきたところです。
また、先ほども申し上げましたが、東日本大震災を契機として、県内にあるため池1,773カ所のうち、規模が極めて小さい500カ所を除く1,273カ所について、目視や資料に基づく一斉点検を実施しました。この結果、決壊した場合に人家などへの影響が懸念される「防災重点ため池」と言われるものがありますが、これに該当するため池が140カ所、このうち、当面、決壊などの危険がないものが22カ所、豪雨や地震に対する安全性について、より詳細な調査が必要なものが118カ所あると判明しました。
さらに、ため池管理の具体的な方法などを示した「ため池管理マニュアル」を作成して管理者に配付し、説明会を開催したほか、ため池一斉点検の結果についても管理者に通知するなど、管理者に対する指導を強化しているところです。
また、地域の防災行政を担う市町村に対し、防災重点ため池のハザードマップを作成するよう働きかけを行った結果、現在作成中の1カ所を除く139カ所のハザードマップが既に作成されまして、市町村のホームページ等で公表されております。
今後は、ため池の管理者や関係市町村と連携しながら必要な調査や整備を進め、ため池の安全管理に取り組みたいと考えています。


◯安藤委員

整備されたため池があったとしても、今の異常気象の中で、大雨によって洪水が引き起こされることもあり得る。今、ハザードマップの話がありましたが、大雨時の対応についてどのような体制がとられるようになっているのでしょうか。

◯野中農村整備課長

今、お答えしましたとおり、決壊した場合に下流の人家に影響が生じる可能性のある防災重点ため池については、災害対策基本法に基づいて市町村が作成する地域防災計画に位置づけておりまして、それでハザードマップを作成しております。したがいまして、災害が発生するおそれがあるときは、市町村が地域防災計画に基づいて必要な警報、または連絡を行うことになっておりますので、そういう意味では、連絡体制はとれていると考えています。

「深浦町におけるナラ枯れ被害の発生状況について」

◯安藤委員

冒頭言ったように、九州でのため池決壊等、東日本大震災でもそうした事例もあったと聞いていますので、ぜひ青森県で同じようなことが起きないような体制をしっかりと県のリーダーシップのもとに築いていただきたいと思います。
次の質問に移ります。
ナラ枯れ被害について質問します。ナラ枯れは全国的に約8.3万平方メートルと前年から倍増し、全国30府県で発生し、平成27年度には本県と隣接する秋田県八峰町で初めての被害が確認されたとされております。このたびの平成28年度シーズンの被害状況で、本県にも及んでいるという発表に大変驚いたところです。
そこで改めてお聞きします。深浦町におけるナラ枯れ被害の発生状況についてお伺いします。

◯杉山林政課長

深浦町のナラ枯れ被害については、平成22年12月に、大間越地区の民有林で2本の被害木が確認されて以降、発生は見られませんでした。
しかし、平成28年7月に、県が大間越地区で実施していたナラ枯れ被害を媒介するカシノナガキクイムシの生息調査でキクイムシが採取され、周辺地域を調査したところ、ナラ枯れ被害木6本を確認したことから、国有林を管理する津軽森林管理署と連携して、深浦町一帯のナラ林について、県防災ヘリコプターによる上空探査や地上からの目視調査を実施しました。
その結果、平成29年6月末までの平成28年度シーズンに、大間越地区、松神地区、森山地区、岡崎地区、轟木地区の民有林で23本、大間越地区、松神地区の国有林で62本、計85本の被害木が確認されました。


◯安藤委員

民有林、国有林合わせて85本ということですが、どのような調査体制で発見をしているのか、国有林、民有林、それぞれ管理者が違うわけですが、その辺はどのようになっているのか伺いたいと思います。

◯杉山林政課長

枯死木の探査につきましては、同時に進行しておりますマツクイムシ被害と同様に、地上からの目視調査、それから、県防災ヘリコプターによる上空からの探査などによって行っております。民有林につきましては、県の職員や巡視員がおりまして、巡視しております。また、国有林につきましては、森林管理署の職員が調査を行っているところであります。


◯安藤委員

ナラ枯れ被害の発生要因についてお伺いします。

◯杉山林政課長

ナラ枯れ被害は、カシノナガキクイムシという体長5ミリメートル程度の昆虫が樹木に穴をあけて入り込む際に、キクイムシに付着しているナラ菌が樹体内で増殖し、樹木の水分の流れを阻害することによって枯死するもので、主に、幹の直径がおおむね20センチメートル以上に成長したナラ類で発生します。
被害発生の要因として、以前は薪や炭として利用されてきたナラ林が放置されまして、太い木がふえてきたことや、近年の高温少雨等によって、カシノナガキクイムシの繁殖に適した環境となっていることなど、被害を受けやすい条件が整ってきたことが考えられます。


◯安藤委員

これまでは長い間、薪にするために伐採するという状況がありましたが、今はそれを切って使う方はほとんどいないということで、大木になっていってこういう事態になっているということです。結局、そういう条件というのは今後もずっと続くわけなので、それをいかに防止していくかということは非常に重要かと思うのですが、被害の拡大防止に向けて、今後どのような対策を講じていくのかお伺いします。

◯杉山林政課長

今後、ナラの木は大きくなりますが、まず、薪や炭の原料として、それから、シイタケ原木のほだ木のほか、使えるものは使っていただきたい。家具材や床材などの利用も可能なことから、一定量まとまって製作している場合などは、木材としての利用を促していきたいと考えているところであります。
また、森林整備を進めながら、太いものもある程度切りながら、順次若返りをさせていくという方法も考えているところであります。


◯安藤委員

家具材などにも利用するようにというお話でしたが、今現在、ある程度は利用されているのですか。

◯杉山林政課長

ナラ類が生育している場所では、一度に切って大量に運べるので採算が合うため、そういう使い方をしているのですが、点在している場所では、なかなか難しいというのが現状です。


◯安藤委員

被害の拡大防止のためのいろいろな方策を一生懸命考えていらっしゃるとは思いますが、他県でも被害がかなり拡大していると思います。青森県が今やろうとしているようなことを、被害が拡大してきた他県でもやってきたものなのか、他県の教訓をどう生かしていくかということが大事だと思うのですが、いかがでしょうか。

◯杉山林政課長

他県におきましても、被害対策ということで、基本的には早期発見・早期駆除、そして、伐倒・くん蒸を基本としてやってきております。本県も基本的にはそういう形で進めたいと思います。ただ、まだ被害に遭っていない部分、これの利用できる部分については利用していきたいと考えているところです。


◯安藤委員

ナラの木はドングリがなりますよね。ドングリの実を食べる熊などが、ナラの被害が拡大して、他県のような状況になると、食料がなくなって里におりてくるような事態が広がってしまうのではないかと危惧しているのですが、そのようなことはないのでしょうか。

◯杉山林政課長

確かに、ミズナラ、コナラ、カシワ、クリなどのナラ類は被害を受けるのですが、この中で一番被害を受けやすいのがミズナラです。ほかの樹種、コナラなどドングリがつくものはいっぱいありますので、一度にそういう状況にはならないのかなとは思います。


◯安藤委員

山の中のナラ類の木が絶滅するなどということがないように、早いうちに手を打っていただいて、ますますの北上がないように、ぜひ頑張っていただきたいと思います。
次の質問です。
日EU・EPA交渉の大枠合意についてです。安倍内閣は影響評価もせず、農業関係者の不安を無視して日欧EPAの大枠合意をしたことは許されません。生産現場からは、自動車のために農業が犠牲になるようなことは反対という声も上がっています。農産品では、ソフトチーズに最大3万1,000トンの低関税輸入枠を設定し、16年目に撤廃することや、ワイン、パスタ、木材などの減税・撤廃などでTPPを上回る市場開放だと指摘の声が上がり、EU側が加工食品の対日輸出が最大1兆3,000億円増加と予測するなど、農業の打撃が深刻だと推測されます。
そこで、日EU・EPA交渉の大枠合意における本県の農林水産業への影響について、県はどのように捉えているのかお伺いします。

◯山田農林水産政策課長

日EU・EPAの大枠合意においては、豚肉やチーズ、バターなどの乳製品、木材製品の関税を一定期間段階的に引き下げ、または撤廃することなどが主な内容となっていますが、現時点で、国が影響試算や国内対策の具体的な内容について明らかにしていないことから、県としては、本県農林水産業への影響を正確に把握できる状況にはないと考えています。
また、影響として想定されるものは、豚肉については国産は主に家庭消費用であるのに対し、EU産は主に加工や業務用に仕向けられる冷凍での輸入のためすみ分けがされていますが、一部が家庭消費向けに流通すれば、価格の低下などが懸念されます。
また、チーズやバターなどの乳製品については、国内ではその原料に仕向けられる生乳のほとんどが北海道産であることから、本県への直接的な影響は少ないと見込まれますが、EUから乳製品が輸入されることにより、北海道などの加工仕向け用生乳の一部が飲用に向けられた場合は、生乳の価格下落が懸念されます。
また、林産物については、丸太は既に関税が撤廃されていることから、直接的な国内価格への影響は少ないと考えられますが、今後、EUから集成材等の木材製品の輸入が増加した場合は、競合する本県製材工場等の製品価格や、本県から他県に出荷している原料用の丸太価格の下落が懸念されます。
一方で、EUへの輸出については、実績がある冷凍ホタテの8%の関税が8年目に撤廃されることから、将来的には輸出拡大の可能性があると捉えています。


◯安藤委員

直接的な影響は少ないというお話ですが、やはりこうした影響の数字をしっかりと出さずに大枠合意というのは、本当に信じられない話だと思います。こうした動きが正式な合意になっていくことになれば、特に畜産に影響を及ぼすということは十分考えられますので、この大枠合意を撤回させるような動きをぜひつくっていただきたいと思っています。
そこで伺いますが、日EU・EPA交渉の大枠合意を受け、県は国へどのような働きかけを行っていくのかお伺いします。

◯山田農林水産政策課長

去る7月6日の日EU・EPA交渉の大枠合意を踏まえまして、国では、本年秋を目途に、平成27年11月に策定した「総合的なTPP関連政策大綱」を改訂しまして、日EU・EPAにより必要となる施策等について盛り込むこととしています。
県としましては、農林水産省や外務省などに対して、大枠合意前の6月21日に北海道東北地方知事会において、必要な国境措置の確保などについて要請しました。また、7月11日には、全国知事会において大枠合意の詳細な内容と地方経済への影響等について、迅速な説明と万全な対策をとるよう要請したところです。
今後は、国が策定することとしている政策大綱の検討過程において、情報を適時適切に提供していただくことに加え、その内容が地域の実情を踏まえた実効性のある施策かどうか見極めながら、全国知事会や北海道東北地方知事会と連携しまして、国に対する働きかけを検討していきたいと考えております。

「リンゴ生産における不受精花(カラマツ)の発生状況等について」

◯安藤委員

生産者の方たちの声をしっかりと受けとめながら、毅然とした対応をとっていただきたいと思います。
次の質問です。
リンゴ生産における不受精花(カラマツ)の発生状況等について伺います。着果状況調査結果において、不受精花の発生状況をどのように捉えているのかお伺いします。

◯舘田りんご果樹課長

先ほど部長からの報告事項にありましたが、7月12日及び13日に行った着果状況調査によると、県全体の着果率は、「ふじが」32.7%、「ジョナゴールド」が34.5%、「つがる」が37.1%、「王林」が39.3%と、平年比で全ての品種、それから、前年比で比べますと、「ふじ」を除く品種が上回っておりまして、一部園地で不受精花、要するにカラマツですが、見られているものの、本年産のリンゴ生産量への影響は少ないものと考えております。


◯安藤委員

全体の生産量には影響はないというお話なので、リンゴ生産においては影響ないということで受けとめたいと思いますが、中にはカラマツの発生がやや多いと言われている地点もあるようですので、そうした生産地の方々の状況をよりしっかり把握していただいて、対応を行っていただきたいと思っています。
この不受精花の発生減少に向けた今後の取り組みについてお伺いしたいと思います。

◯舘田りんご果樹課長

不受精花の発生要因は、一般的に、凍霜害による花器、これはめしべとかおしべという話になりますが、その障害、それから、開花期間中の強風、低温、降雨等の気象条件による花器の能力低下、低温によるマメコバチ等の活動低下などの気象条件によるもののほか、飼養管理が不十分な園地では、マメコバチが減少していたこと、それから、リンゴは同一品種間で受粉しにくい品種が多くて、品種が偏っている園地では、受粉できる花粉そのものが少ないことが考えられます。
このため、県では、マメコバチの飼養管理を徹底するとともに、マメコバチ等に過度に頼らず、気象条件に左右されない、人手による受粉も実施するよう、農協、りんご協会等関係機関と連携し、指導を強化していきたいと考えています。


◯安藤委員

せっかくのリンゴ生産の中で、カラマツが発生するということは非常につらいことですので、今、お話しされたようなマメコバチの管理だとか、人手による受粉を行うなどの指導が行き渡るように、そして、それが実際に生産過程に生かされるような体制をぜひとっていただきたいと思っています。
それとも関連することになるのですが、次の質問に移りたいと思います。
リンゴ生産における補助労働力の確保についてです。こまめな人手による作業というのは、やはりリンゴの生産には欠かせないわけですが、労働力不足が深刻な状況だということをお聞きしています。弘前市では、農産物生産額、果樹で日本一という状況ですが、リンゴ生産現場では、農業者の高齢化や担い手の減少に加え、補助労働力不足が顕在化しており、高品質リンゴ生産に欠かすことができない早期適正着果や適期収穫などの作業に支障を来していると言われています。こういう中で、補助労働力の確保のための施策の展開を強く要望されているわけですが、1点目として、次世代につなぐ新たな「りんごづくり」確立事業の取り組み内容についてお伺いします。

◯舘田りんご果樹課長

本事業は、本県のリンゴ生産現場における後継者・補助労働力不足や高齢化の進行に対応し、将来にわたり高品質リンゴの安定生産を堅持するため、補助労働力の確保、省力化による労働力低減、病害虫共同防除組織の広域化の3つの柱で構成されています。
具体的には、補助労働力の確保対策としては、国の「援農隊マッチング支援事業」を活用し、リンゴ作業の補助労働力の募集や生産者とのマッチング支援などにより、労働力供給の構築を進めていくこととしております。
また、省力化による労働力軽減対策としては、県内大学等研究機関、農機具メーカー、関係市町村、農協、県を構成機関とした「ハイテク技術等活用推進会議」を設置し、アシストスーツ等最新機器や高密植わい化栽培等最新技術による労働力軽減手法の検証を行うこととしております。さらに、病害虫防除体制の維持を図るため、県りんご共同防除連絡協議会が作成した広域化マニュアルに基づき、各地区の共同防除組織の合併・再編を推進する取り組みを推進しているところでございます。


◯安藤委員

今のお話の中にあった、ハイテク技術等の検証ということで、女性や高齢者でも重いものを作業の中で持つということを少しでも軽減するということも入っているかと思うのですが、検証していて実用化というのは、どのくらい見通せるものなのでしょうか。

◯舘田りんご果樹課長

昨年度、りんご研究所において研究していただいた中身としましては、収穫の箱を運ぶ作業を軽減化できないかということで、腰の負担を中心に、ロボットスーツがそういうものに活用できるかということを検証させていただきました。結果としては、やったら少しは楽になるのかなという形でありますけれども、一番問題なのが、単純作業にしか今、使えない。要するに、汎用性がまだないということ。それから、装着自体、例えば、体の機能に合わせてやるといったら、いろいろなところに装着の仕方といいますか、そういう作業性があるということで、非常に煩雑さがありまして、ことしはもう一度検証しますが、もう少し、例えばサポーターのような形の、腰の負担を少しでも減らすよう、一般の作業などでも使えるような形のスーツとか、そういうものを含めてことしは検証していこうと考えております。


◯安藤委員

ぜひ実用化を目指して、そしてまた、余り高くなくて利用できるようなものをつくり出していただきたいと思います。
次の質問ですが、援農隊マッチング支援事業の取り組み状況についてお伺いします。

◯舘田りんご果樹課長

本事業は農林水産省の公募事業を活用して行っている事業でございまして、国の事業によりますと、事業実施主体は都道府県、市町村、協議会、民間団体で行う事業でございます。
この事業を活用しまして、昨年度、市町村、農協等関係機関を構成機関とした「労働力確保推進会議」を設置し、労働力実態把握調査や補助労働力の募集方法について意見交換を行い、弘前市相馬地区をモデル地区として、相馬農協さんの協力を得まして、組合員の労働力実態調査を行ったところでございます。
その結果、回答者の8割が既に補助労働者を導入している中で、特に、摘果、葉摘み、収穫作業、この3つの作業で慢性的に労働力不足を感じていることが判明しております。その内容を踏まえて、補助労働者の募集方法等について意見交換を行っているところでございます。
本年度は、今後、補助労働者の募集や技術研修、生産者への労務管理研修を実施した上で、9月から双方のマッチング支援をして補助労働力の確保に努めていきたいと考えているところでございます。


◯安藤委員

相馬地区で労働力調査を行って、ことしの秋から実際に具体化するということだと思うのですが、ことしの状況ももちろんきちんと検証しながら、次の年にもつないでいただけるような制度に充実させていただきたいと思っています。特に、相馬を持つ弘前市から、この制度を次の年にもつなげていただきたいという声が挙がっていますので、そのことをぜひ要望したいと思います。
これからの予算のことにも絡むかとは思いますが、今後の見通しというのは、もしお答えいただけたらお願いしたいと思います。