2011.8.19: 平成23年度環境厚生委員会 抜粋 本文(質疑4)
 次の質問ですけれども、介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律についてです。
 この法律は、6月15日に成立してしまいました。東日本大震災の救援に全力を挙げている医療や介護関係者は、こういう時期に説明が不十分な中で採決されたということで、抗議の声が大変上がっていました。そういう今回の法の改正ということになったわけですが、法律の概要について、どのようにとらえているか伺いたいと思います。
◯伊藤高齢福祉保険課長
 介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律につきましては、委員がおっしゃいましたとおり、本年6月15日に可決成立し、6月22日に公布されました。
 改正された法律の概要につきまして、主なものを御説明いたします。
 まず、医療と介護の連携の強化等として、単身・重度の要介護者等に対応できるよう、「24時間対応の定期巡回・随時対応サービス」を創設。また、保険者の判断による予防給付と生活支援サービスの総合的な実施を可能とする「介護予防・日常生活支援総合事業」を創設いたしました。
 次に、介護人材の確保とサービスの質の向上として、介護福祉士や一定の教育を受けた介護職員等によるたんの吸引等を実施することが可能となりました。
 また、介護保険料の軽減等に活用するため、各都道府県で積み立てている財政安定化基金を平成24年度に限り取り崩すことができることとなりました。
 これらにつきましては、平成24年4月1日の施行となります。
 以上でございます。
◯安藤委員
 すべて質問していると、時間が長くなるので、幾つかの質問に絞らせていただきます。
 市町村任せになる介護予防・日常生活支援総合事業が決まったわけですけれども、このサービスの質が十分保たれるのかという疑問の声が上がっていますが、この点について、サービスがきちんと担保されるのかという点については、どのような認識でおられるでしょうか。
◯伊藤高齢福祉保険課長
 介護予防・日常生活支援総合事業につきましてですが、これまで要支援と認定された方には、介護予防ケアマネジメントに基づき介護予防サービス、地域密着型介護予防サービス、福祉用具購入、住宅改修というサービスが提供されております。このほかに地域支援事業としての介護予防事業や地域で自立して日常生活が送れるように支援するためのサービスが提供されております。
 今回のこの総合事業の創設によりまして、要支援者が受けられるサービスの幅は広がるのではないかと考えております。
 以上です。
◯安藤委員
 最後のところ、聞き取れなかったんですが、要支援者の不安が大きくなるとお答えになったのですか。
◯伊藤高齢福祉保険課長
 失礼いたしました。要支援者が受けられるサービスの幅が広がるのではないかと考えております。
 以上でございます。
◯安藤委員
 要支援者のサービスの幅が広がるというとらえ方をされているようですけれども、しかし、これまでは要支援の方たちが介護保険サービスを受けられていたわけですけれども、利用者の意に反して、それまで利用していた介護サービスを取り上げられる事態も生まれるのではないかと危惧されています。この点について、利用者の選択権といいますか、そういう意味でのとらえ方はどのようにされるのでしょうか。
◯伊藤高齢福祉保険課長
 介護予防・日常生活支援総合事業における利用者のサービス選定方法は、利用者の状態や利用者の意向を踏まえ、市町村、地域包括支援センターが適切なサービスを判断すると聞いております。また、衆議院及び参議院における委員会審議において、要支援認定者が従来の介護予防サービスとこの総合事業を選択、利用する意志を最大限尊重するという内容を含む附帯決議がされておりますので、市町村がサービス内容を最終的には決定するものの、利用者の意向も踏まえた適切なサービスが提供されるものと考えております。
 以上です。
◯安藤委員
 利用者の意向を尊重するという附帯決議があるということですけれども、市町村の支給決定に対して利用者が不満である場合は、介護保険審査会に申し立てるような手だてがあるかと思いますけれども、そのような仕組みといいますか、高齢者の方たちが決定に対して不満を持った場合に、こういう異議申し立ての方法もあるということをぜひ伝えていく必要があると思いますが、介護保険審査会は県の取り組みになるかと思いますので、その辺についての情報をぜひ高齢者の方たちにもお知らせしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
◯伊藤高齢福祉保険課長
 まず、市町村が決定したサービスが利用者にとって不満である、あるいは不服があるという場合、まず、市町村では今回のこの目的、事業を遂行するに当たっては、利用者の意向を最大限尊重することになっておりますので、その旨、市町村にまずは申し立てることは十分可能であると思います。また、介護保険事業、保険料等を踏まえて、介護保険事業そのものに不服、あるいは内容が納得行かないというような場合は、介護保険審査会のほうに申し立てすることも可能でございます。その周知の仕方については、十分配慮してまいりたいと考えております。
 以上です。
◯安藤委員
 利用されている方は、皆さん高齢者ですので、なかなか不満であっても、そういう手だてをとれない、泣き寝入りというような事態も起きるのではないかという懸念があります。しかし、きちんと情報は周知していただきたいということと、泣き寝入りなどということがないような、やはり最大限、利用者の意向が尊重されるような取り組みがなされるように、ぜひ市町村に対しても助言をしていただきたいと思います。
 これは意見にとどめたいと思いますけれども、総合事業を行う地域支援事業は、その事業費が介護給付費の3%以内という制限があります。この制限のままでは必要なサービス提供が不可能となるのではないかと思います。総合事業を実施するなら、3%以内という制限を引き上げることが必要であり、ぜひこの点についても、国に声を上げていただきたいと思います。軽度者からの介護取り上げは、必要なケアを受けることで生活が成り立つ高齢者から生きるための基礎を奪うことになると思います。そのようなことが発生しないように、ぜひ軽度者の方たちの介護を守っていただきたいと思います。
 次の質問、県がかかわる部分の今後の計画について伺います。介護職員等によるたんの吸引等の実施についてです。これまで特養ホームや在宅ALS、筋萎縮性側索硬化症患者などに限定していたものを在宅サービスのヘルパーや他の施設にも拡大し、法制化するものと理解しています。この点についての質問をいたします。
◯伊藤高齢福祉保険課長
 今回の介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律により改正されました社会福祉士及び介護福祉士法によりまして、介護福祉士の資格に基づく行為にたん吸引及び経管栄養が加えられました。また、一定の条件を満たす場合は、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホーム、障害者支援施設、訪問介護事業者等の介護職員等がたん吸引等を実施することができるとされたところです。
 介護職員等によるたん吸引等の実施は平成24年4月1日から、介護福祉士の資格に基づく行為へのたん吸引等の追加については平成27年4月1日から施行されるものとなっております。
 介護職員等が医療行為であるたん吸引等を安全に実施するには、介護職員等に対する十分な研修が必要とされているところですが、その研修は、今年度から県が実施することとされております。県が研修を実施するには、講師となる医師、または看護師が国が開催する中央研修で受講することとなりますが、中央研修の日程等はまだ決まっていないところでございます。
 以上でございます。
◯安藤委員
 講師になる医師は、大変忙しい中で国の研修も受けなければならないと、医療行為を介護者が行えると、行うということによって、新たな技術を身につけなければいけないと、これまでにないことをまた県が担わなければいけない事態にあるわけです。たん吸引などの実施は、試行事業の検証作業中で、研修内容や研修機関、登録事業所の要件なども未定と聞いています。万一、事故が起きれば、命にかかわる問題であり、絶対に見切り発車は許されないと思います。十分な研修が実施されるよう、十分な対応を求めたいと思いますが、具体的な方針、計画というものがもしあれば伺いたいと思います。
◯伊藤高齢福祉保険課長
 たん吸引等の研修についてでございますが、今、明らかになっている部分につきまして、基本研修は50時間の講義と人体モデル等を使用した演習を行います。人体モデル等、演習に必要な器具は、昨年度、県で購入済みでございます。また、実地研修は施設や在宅で実際にたん吸引等を行ってもらうので、たん吸引については、口腔内10回以上、鼻腔内及び気管カニューレ内を各20回以上、経管栄養は胃ろう、または腸ろう、経鼻経管栄養は各20回以上とされております。なお、平成28年1月の介護福祉士国家試験受験予定者の養成カリキュラムも同様になる予定と聞いております。
 この研修の委託は、現在のところ、委託先は検討中でございます。
 研修について、当初予算に既に計上しているわけですが、予定する人員としては、平成23年度中につきましては75名から100名程度と考えております。また、現在の国の案では、基本研修終了後に知識の確認のために筆記試験を課すこと、また、基本研修、実地研修の各研修終了ごとに個別で評価を行うとされております。
 以上であります。
◯安藤委員
 実地研修も入っているようでして、実地研修というのは、高齢者、たんの吸引が必要な方のところに行って実地研修をすることなわけで、非常にそういう意味でも実地研修をされる側も大変さがあることを感じます。とにもかくにも、たん吸引というものを医療行為から外して介護者がやれるようにすること自体がやはり大きな問題だと思います。決まった以上は、事故などがないように十分配慮して行っていただきたいことを要望しておきます。
 最後の質問ですが、財政安定化基金の取り崩しについてです。2012年から14年度、5期の介護保険料改定を迎えるに当たり、厚労省は現在の平均月額4,160円から5,200円程度となる試算を出し、財政安定化基金の取り崩し規定を設け、市町村の介護給付費準備基金の取り崩しとあわせて保険料の上昇を月額5,000円程度に抑えるとしております。そこで、県の財政安定化基金の取り崩しについての考え方を伺います。
◯伊藤高齢福祉保険課長
 財政安定化基金は、都道府県が管内の市町村の介護保険財政の財源に不足が生じた場合、一般財源を繰り入れなくてもよいよう、資金の貸し付け、または交付を行うために設置している基金で、原資は国、県、市町村が3分の1ずつ拠出しております。
 この基金の取り崩しにつきましては、今回の改正で、平成24年度に限り、一部を取り崩して介護保険料の軽減等に充当活用できるとされました。
 この基金の原資は、国、県、市町村が拠出しておりますので、基金取り崩し額の3分の1を市町村に交付し、交付を受けた市町村は第5期介護保険事業計画期間である平成24年度から26年度の保険料の軽減に活用することになります。また、基金取り崩し額の3分の1は国に納付し、残りの3分の1は県の介護保険事業に要する経費に充てるよう努めることとされております。
 なお、基金の取り崩しに当たっては、過去最大の貸付水準や近年の貸付状況等を参考に、基金本来の目的に支障が生じないと判断した額を確保した上で、残額部分について取り崩すという基本的考え方が国から示されたところでございます。
 今後、国から都道府県用取り崩しワークシートが配付される予定ですので、このワークシートにより取り崩し額を試算し、本県の実情等も勘案し、具体的にどの程度の額を取り崩すことが適当であるのか検討していきたいと考えております。
 以上です。
◯安藤委員
 保険料がまた高くなるということで、少しでも保険料を抑える意味で財政安定化基金の取り崩しが示されたわけで、ぜひ県としても3分の1の負担をしているわけですので、取り崩しに当たっては、県の返納分を高齢者の負担軽減にしっかりと充てていただきたいと思っています。
 今回の介護保険改定は、介護崩壊とまで言われる深刻な介護の危機には背を向けて、公費抑制と、そのための重点化、介護保険制度を重度者向けにシフトさせる制度見直しに終始するものと思います。国の責任を後退させ、保険あって介護なしを一層進めるものだということを強調しておきたいと思います。
 以上で質問を終わります。