2011.11.21: 平成23年度環境厚生委員会 抜粋 本文(質疑2)
 次の質問ですが、介護職員処遇改善交付金について伺います。
 この制度が今年度で終了するわけでありまして、この介護職員処遇改善交付金事業について、事業の継続が必要と考えますが、国の動向と県の考え方を伺います。
◯伊藤高齢福祉保険課長
 お答えします。
 介護職員の賃金について、国では他の業種との格差を縮め、介護が雇用の場としてさらに成長していけるように、介護職員の処遇改善に取り組む事業者に資金を交付する介護職員処遇改善交付金事業を平成21年度から実施しているところですが、本県におきましても、国から当該交付金を受け、平成21年度からこの事業を実施しております。
 この事業は、平成23年度末までとされておりますが、国は、平成24年度以降も現在の制度を継続するか、または介護報酬に組み込むかのいずれかの方法によって、介護職員の処遇改善に取り組んでいくとしておりまして、この方針に基づき、国は平成23年10月17日に開催された社会保障審議会介護給付費分科会において、介護報酬において処遇改善措置を実施する場合の考え方を案として示したところです。
 その内容は、現在の交付金制度と同等の額が事業者に交付される処遇改善加算として介護報酬に組み込むというものです。
 この国の案に対しまして、社会保障審議会介護給付等分科会において、今後も審議されていきますので、県としては適宜情報を得ていくこととしております。
 また、県では、介護職員の確保などのためには、介護職員の処遇改善をしていくことが必要と考えておりまして、本年11月9日に介護職員の処遇改善事業などについて、介護報酬改定での措置など国の財政措置による恒久的な制度として確立すること、早急な制度化が困難な場合には、当面、基金の実施期間を延長することを内容とする知事及び県議会議長名での要望書を本委員会の越前委員長を筆頭として、厚生労働省に出向いて国に提出したところでございます。
◯安藤委員
 今の説明の中にもありましたけれども、介護報酬の中に組み込めば、介護報酬の約2%に相当すると言われております。当然、介護保険料の引き上げ、利用料の増大に結びつくという危惧があるわけですが、こういう方向に行かないよう検討が必要だと思いますが、この点についての見解をいただければと思います。
◯伊藤高齢福祉保険課長
 介護職員処遇改善交付金を介護報酬に組み込むとすれば、国全体で年間約1,900億、介護給付費に換算しますと、安藤委員がおっしゃったとおり、約2%増になると試算されております。介護保険料への影響としましては、第4期計画期間における第1号被保険者の保険料が介護給付費全体の約20%とされておりますので、第1号被保険者の保険料を0.4%程度上昇させることになると思います。このため、国は、第1号被保険者の保険料の増を極力低くするために、第2号被保険者の保険料の増を検討していると聞いているところです。また、介護給付費の増は、介護報酬の単価の増ということにもなりますが、これは介護報酬額の1割とされる利用者負担に影響を与えます。この影響は、平均0.2%の利用者負担の増になると見込まれているところです。
◯安藤委員
 第2号の方たちの保険料のアップにつながるということですが、本当に今でも介護保険料の負担は重いもので、これをさらに、この介護職員処遇改善交付金のために、そこにはね返るというのは、やはり納得がいかないものです。その方向ではなく、現在の交付金の制度の継承をぜひ、県と県議会一体となって継続について求めていただきたいと思います。
 これまで介護職員処遇改善交付金が利用されているわけですが、必ずしも介護職員の処遇改善、給与の面に生かされているとは限らないようでありますが、この処遇改善交付金というものがどのようなものに活用されてきたのか伺いたいと思います。
◯伊藤高齢福祉保険課長
 本交付金は、介護職員の賃金改善に要する費用以外の費用に充ててはならないこととされています。介護職員の支給形態としましては、給与のベースアップ、あるいは定期昇給、あるいは手当、賞与、一時金等とされておりまして、現実には当該交付金事業の継続性に不安があったことなどから、給与への付加を避け、手当、一時金での支給が多いと聞いているところであります。
◯安藤委員
 手当、一時金という活用の仕方ではなく、そのほかの活用も使われているのではないでしょうか。使われ方としては、給与の面だけでしょうか。
◯伊藤高齢福祉保険課長
 お答えします。
 繰り返しの答弁になって恐縮ですが、この交付金は介護職員の賃金改善に要する費用以外の費用に充ててはならないこととされておりますので、これに直接結びつく使途がされたものと考えております。
◯安藤委員
 そうしましたら、県内で、この介護職員処遇改善交付金を申請してきた事業所の状況について伺います。
◯伊藤高齢福祉保険課長
 お答えします。
 最新の情報で、平成23年11月1日現在の申請事業所数は、対象となる事業所数1,440カ所のうち、1,157カ所となっております。
◯安藤委員
 対象数が1,440カ所で、申請されたのが1,157、この差についてですけれども、必ずしも申請していない事業所もあるという数字が出ているわけですが、申請しないところの事情といいますか、それを選択していない事業所の考え方はどういうものが背景にあるのか伺います。
◯伊藤高齢福祉保険課長
 お答えします。
 賃金等、職員の処遇につきましては、一たん上げますと下げることが難しくなるものと考えます。そのため、この制度が廃止されることや交付額が低くなる可能性があれば、事業者はこの制度に不安を抱き、申請の意欲を低下させることになると考えております。この交付金制度は、平成23年度末までの期間限定の制度でして、平成21年度から始まり、平成24年度以降も歴代の厚生労働大臣が処遇改善に係る事業を継続する意向を示してはきましたが、それによってもすべての不安を払拭させることができなかったことが一つの要因であると考えております。また、この交付金制度は、介護職員を対象とする制度ですが、交付金の対象とならない職員を多く雇用する事業所で、介護職員のみの賃金と処遇を向上させるわけにいかないという内部事情もあると考えられます。例えば、ケアマネジャー等の居宅介護支援、看護職員、栄養士、事務員等も施設には雇われているという状況でございます。そして、事業者は交付金を受けるに当たって、事業者が交付金対象外職員分の処遇改善分を負担する必要が生じる場合も考えられます。こういう面で、申請をしない事業所があるということも聞いているところであります。
◯安藤委員
 今のお話から、せっかくこういう制度があっても、将来的にこの制度が継続されるかどうかという不安の中で、せっかくの制度を活用していない、介護職員の処遇改善につながっていないという事態があるわけで、そういう意味からしても、この交付金制度が限定つきではなく、しっかりとした安定的な制度として組み込まれていくことが必要だと思います。ぜひとも継続されるよう、強力に声を上げていただきたいということをお願いして、この質問は終わります。