2012.03.21: 平成23年度環境厚生委員会 抜粋 本文(質疑6)
◯安藤委員
 次の質問に移ります。
 地域主権改革推進一括法、児童福祉法関係について伺います。
 先月の当委員会後に開かれた青森県保育連合会など保育三団体との懇談会の中で、問題提起された件について質問をさせていただきます。
 児童福祉施設の最低基準を地方自治体に条例委任することなどを内容とする地域主権改革推進一括法が昨年成立しましたが、その概要について伺います。
◯鈴木こどもみらい課長
 児童福祉施設の設備及び運営に関する基準は、これまで国が全国一律に決定し地方自治体に義務づけていましたが、平成23年5月2日に公布された地域主権改革推進一括法により、地方自治体が地域の実情に応じて、みずからの責任において決定できるように、県が条例で定めることとなったところでございます。
 都道府県が条例を定めるに当たって、人員配置基準、居室面積基準、虐待の禁止や秘密保持など、人権に直結する運営基準などにつきまして、厚生労働省令で定める基準に従うことになっており、それ以外の設備及び運営に関する基準につきましては、厚生労働省令で定める基準を参酌することとなっております。
 今申し上げた従うべき基準は、必ず適合しなければならない基準であり、当該基準に従う範囲内で、地域の実情に応じた内容を条例で定めることは許容されるものの、異なる内容を定めることは許容されないものでございます。
 また、参酌すべき基準は、地方自治体が十分参酌した結果であれば、地域の実情に応じて異なる内容を条例で定めることが許容されるとされております。
 地域主権改革推進一括法の施行日は平成24年4月1日となっておりますが、施行日から1年を超えない範囲内で、条例が制定されるまでの間は、省令で定める基準を条例で定める基準とみなす旨の経過措置が設けられております。
 もう一度、御説明いたしますけれども、地域主権改革推進一括法の公布が平成25年と聞こえたかもしれませんけれども、平成23年5月2日でございます。
◯安藤委員
 今回の条例制定に当たっての県の考え方と今後のスケジュールについて伺います。
◯鈴木こどもみらい課長
 県では、昨年8月及び本年1月に児童福祉施設関係団体と条例に関する意見交換を行いました。関係団体からは、現行の最低基準を下回らないようにしてほしいといった意見が出されました。条例制定に当たっては、そういった意見も参考としながら、児童の福祉が低下することがないように定めていきたいと考えております。
 今後のスケジュールといたしましては、現在条例案の内容について実務的な検討を行っているところですが、3月29日に社会福祉審議会を開催し、社会福祉事業の従事者や学識経験者等の意見や、委員の皆様から御意見をいただき、さらにパブリックコメントを経た上で、来年度県議会に条例案を提案することとしております。
◯安藤委員
 意見交換会の中で、現場の方々から、最低基準を下回らないようにというお話があったということですが、やはりそのことが一番心配されていることなわけです。
 国の省令どおりに行うというお話でしたが、国の省令3条、「都道府県は最低基準を常に向上させるように努めるもの」、4条では、「児童福祉施設は最低基準を超えて、常にその設備及び運営を向上させなければならない」という項目があります。この項目をしっかりと、今回の条例制定で踏襲をしていただきたいというふうに思いますが、この点について確認ですけれども、しっかりと盛り込んでいくということで理解してよろしいでしょうか。
◯鈴木こどもみらい課長
 3条、4条につきましても、それを含めて条例を制定していく予定でございます。国が省令で定める基準のうち、児童の処遇に直接的影響が大きい人員配置基準、居室面積基準などは、従うべき基準とされておりますので、条例の内容が現行の基準を下回ることはありません。
 また、参酌すべき基準につきましても、県といたしましては、基本的に省令で定める基準と同じ内容を条例で定めることを予定しており、現行の基準を下回らない方向で検討しているところでございます。
◯安藤委員
 もう1点、先般の懇談会の中で、保育団体の皆さんからの指摘に、省令により国が定めた最低基準を維持するための費用として定められている運営費の積算基礎としている職員給与想定額が低いために、職務の内容及び専門職の給与としては大変低過ぎる。そして、質の高い保育をするための事業費が人件費を圧迫して、職員の雇用実態として正規雇用の職員を減らし、有期雇用、パート職員で賄っている現状が話されました。このため、保育士への求職者が激減し、職員の確保に四苦八苦している施設が多いという悩みが語られました。この件について伺います。
 保育所において、保育士の確保が最近難しくなっているという話を聞きますが、このことについて、県はどのように考えているか伺います。
◯鈴木こどもみらい課長
 県内の保育士養成施設の卒業者数は近年減少傾向にありまして、卒業者のうち県内の保育所への就職者数も減少傾向にございます。県では保育士の確保に向けて、保育士等が出産のため長期間にわたって休暇を必要とする場合に、産休代替職員を臨時的に任用する場合にも、県単独で保育所等に補助し、児童への適切な処遇の確保と出産する女性の働きやすい職場環境づくりを図っているほか、青森県社会福祉協議会に設置している福祉人材センターにおいて、保育士等の就労支援を無料で行う青森県福祉人材センター運営事業を実施しているところです。
◯安藤委員
 保育士が有期雇用やパートの道しかないという賃金についても、自立して生活していけるようなまともな賃金が得られないということから、保育士の資格を取っても、その資格を生かした就職を望めない傾向があるというお話だったわけですが、この辺についても、同じような理解をされているでしょうか。
◯鈴木こどもみらい課長
 お答えします。
 まず、保育士の給与の水準の実態でございますけれども、厚生労働省が平成22年6月分の賃金等基準に各産業の全国の事業所を抽出して実施した平成23年賃金構造基本統計調査の結果によりますと、保育士の平均給与は月額で22万3,000円となっておりまして、全産業の平均の32万3,800円を下回っている状況でございます。
 ちなみに、介護支援専門員、ケアマネジャーの場合で26万7,000円、ホームヘルパーで21万7,900円、福祉施設の介護員で21万6,400円、幼稚園教諭で22万5,600円といった状況で、これらの職種と比べるとほぼ変わらない水準になっております。これは全国の状況でございまして、県内のデータはございません。
 次に、保育士の資格を取得した方や保育士養成施設を卒業された方の進路の状況でございますけれども、平成22年度において、本県に保育士の資格を取得した者は、保育士試験が21人、保育士養成施設は県内8カ所にある養成施設を卒業した方が368人ということで、合わせて389人となっております。
 この保育士養成施設の卒業生の進路ですけれども、卒業生401人のうち県内の保育所に就職された方々が172人で42.9%、県外の就職が104人で25.9%、未就職の方が69人、17.2%という実態でございますが、委員御指摘のように、給与が低いことにより別の進路を選ぶ方がいるのかどうかといった点につきましては、県として分析等してございませんので、申し上げられないと思います。
◯安藤委員
 先ほど出された22万3,000円というのは、多分正規雇用の平均額だと思います。正規雇用につければ、まだいいんですけれども、なかなか正規雇用の枠もないという実態の中で、有期雇用やパート職員で賄っているという現状があるわけですので、この辺の実態もぜひつかんでいただきたいと思います。
 国が進めようとしている子ども・子育て支援システムに移行すれば、企業がどんどん保育に入ってくることになります。今の保育園では補助金の使い道は保育に限定されていますが、新システムでは何に使ってもよいとされます。例えば、レストランチェーンが保育に参入し、保育での利益をレストランの事業に使うこともできるといいます。親が子供のためにと出したお金と、大事な税金を企業のお金もうけに使える。これは幾ら何でもやり過ぎではないか。特に、0歳児、1歳児には人件費がかかります。決して保育はもうかる分野ではありません。それをもうけるためには、当然コスト削減として人件費が削減され、職場は非正規職員ばかりにせざるを得ません。
 今、現場の方々が非常に頑張って、保育の質をよくしようと頑張っておられますが、制度移行によって保育の質が低下するということが非常に心配されます。この点について、私の心配について、県としてどのようなコメントがあるでしょうか。
◯鈴木こどもみらい課長
 まず、新システムにおける総合こども園についてでございますけれども、幼稚園と保育所を一体化した総合こども園につきましては、他会計への資金の繰り入れや、例えば株主に配当するなど、そういったことは認められないことになってございます。また、事業者がやむを得ず事業を突然撤退するということのないように、予告期間等の設定など、あるいは事前届け出などが義務づけられているほか、利用している児童もほかの施設に継続的に利用できるように調整するなどの義務づけがされているところです。
 正規雇用ではなく有期・パート職員がふえるのではないか、ふえているのではないかということについてでございますが、もちろん職員の正規雇用としてのニーズの安定、職場環境の確保・整備は、非常に大事なことでございまして、県としても、例えば産休を理由としてやめたりすることのないように、産休代替職員の補助制度などをしているところでございますけれども、一方、利用者の立場からいたしますと、時間外保育でありますとか、休日保育でありますとかといったニーズが非常に強うございまして、その辺に対応するために、国としても非常勤職員をもって常勤換算をしまして、利用者のニーズに対応していくことを認めているところでございます。その辺、そういったニーズを踏まえながら、考えていく必要があると認識しております。
◯安藤委員
 この新しいシステムについては、今後の議論の課題にしていきたいと思いますが、いずれにしても、もちろん保育のニーズは非常に幅広いものがありますし、そのニーズにこたえていくというのは、国の責任でもあり、自治体の責任でもあるわけですが、だからといって安心を担保できるような職員の配置を義務づけずに、今言ったような非常勤職員の配置ということが、最初から認められるというのも問題があるのではないかというふうに考えます。今後、保育の質の低下が起きないように、そして現場の先生方の御苦労が報われるような、しっかりとした県としての指導を行っていただきたいということを要望をして、この点については終わります。