2012.03.21: 平成23年度環境厚生委員会 抜粋 本文(質疑9)
◯安藤委員
 それでは、この委員会最後の所管事項の質問ですので、よろしくお願いいたします。
 1つ目の質問は、六ヶ所再処理工場について伺います。
 六ヶ所再処理工場のアクティブ試験で生産されたプルトニウムの量及びどのように保管されているのか伺います。
◯名古屋環境生活部長
 日本原燃株式会社によりますと、アクティブ試験で生産したプルトニウム製品量は、平成24年1月現在ですが、ウラン・プルトニウム混合酸化物の金属ウラン及び金属プルトニウムの合計質量換算で約6,656kgである。
 ウラン・プルトニウム混合酸化物は、粉末缶に充てんし、粉末缶を縦置き円筒型の混合酸化物貯蔵容器に入れ、ウラン・プルトニウム混合酸化物所蔵建屋の空冷機能を持つ収納用の管である貯蔵ホールで保管しているとのことでございます。
◯安藤委員
 私の理解が違っていたんだなということを改めて考えさせられています。プルトニウムを抽出するというふうに理解していたものですから、純粋にウランとの混合ではないプルトニウムが取り出されて保管されているというふうに理解していましたが、そうではなくウランとの混合物だということがわかりました。
 それで、取り出されたプルトニウムがなぜ危険かというと、核兵器に転用されることが危惧されるということで、世界からもそういう目で見られるのだというお話がよく聞かれます。
 そういうことで、国際原子力機関(IAEA)は、原子力の平和利用を促進し、軍事転用されないための保障措置の実施をする国際機関と聞いていますけれども、六ヶ所においてどのような活動がなされているのか伺います。
◯工藤原子力安全対策課長
 IAEAの査察でございますけれども、プルトニウムなどの核物質が平和的にのみに利用され、核兵器に使用されていないことを確認するため、国とIAEAにより保障措置という手続が取られております。
 原子力施設におきましては、核物質の在庫量、移動量、これらを国やIAEAに報告したり、国とIAEAが直接施設へ出向き、報告内容と現場に矛盾がないことを確認する査察が行われています。
 六ヶ所再処理工場におきましては、運転中は国とIAEAが常駐して、これらの査察を行っております。
◯安藤委員
 運転中は査察をということなんですが、今のようにアクティブ試験も中断されているという状況で、その期間は結構長かったわけですが、そういう間の査察というのはどのようになっているのでしょうか。
◯工藤原子力安全対策課長
 現在のようなプルトニウムを生産していない状況ですと、IAEAのほうからの常駐は今はないようでございますが、国のほうでは保障措置センターを構えておりますので、常駐しております。具体的に今の査察というのは、例えばIAEAにおきましては、人がいなくてもカメラで録画をしておりまして、それは封印されておりますので、ほかの人が手をつけられない状況で、記録なり、そういうものを後ほど確認するということになると思っております。
◯安藤委員
 最初の答弁の中で、空冷機能で保管しているということでしたが、これらのプルトニウムとウランの混合物質を管理するに当たって、作業員の方たちがある程度貯蔵ホールの管理をされるかと思うんですが、作業員の方たちあるいは外部に対しての環境的な影響というものはないんでしょうか。
◯工藤原子力安全対策課長
 安全対策といいますか、遮へい対策でございますけれども、日本原燃によりますと、粉末缶への粉末の充てんには遮へい機能のあるグローブボックス内で行うということと、混合酸化物貯蔵容器では、遮へい機能のある台車に取りつけて、グローブボックスに接続し、充てん済みの粉末缶を収納した後、貯蔵ホールへ移送後貯蔵されると。
 基本的には、遠隔自動操作で行うということでございますが、作業員が直接作業する場合は、作業時間を制限するとともに、作業員は鉛グローブ、それから鉛エプロンを装備するというような被爆低減対策をとっているということでございます。
◯安藤委員
 次に、六ヶ所再処理工場から放出されるクリプトン85及びトリチウムについて、アクティブ試験でこれまで放出された量及び本格操業時に放出される量について伺います。
◯工藤原子力安全対策課長
 これまでアクティブ試験で放出されたクリプトン85及びトリチウム、それから本格操業時に放出される量でございますけれども、日本原燃によりますと、アクティブ試験を開始した平成18年3月31日から平成23年3月31日までの放出量は、気体廃棄物としてクリプトン85が約8.1×1016ベクレル、トリチウムが約2.0×1013ベクレル、そして液体廃棄物としてはトリチウムが約2.2×1015ベクレルであるということでございます。
 それから、使用済燃料800トン・ウランを処理した場合の推定放出量でございますが、気体廃棄物としてクリプトン85は約3.3×1017ベクレル/年、それからトリチウムが約1.9×1015ベクレル/年、それから、液体廃棄物としてトリチウムが約1.8×1016ベクレル/年でございます。
◯安藤委員
 その数字を聞いてぱっと入るだけの科学的な知識はないんですが、よくいろいろな運動をされている方たちが指摘していることとして、本格稼働されたとして原子力発電所1年分を再処理工場では1日で排出されると言われています。これが数十年続けば、クリプトン85やトリチウムが相当な量が排出されるというふうに考えるわけですが、この際の人体への影響ということについて、県はどのように認識しているでしょうか。
◯安藤委員
 1ミリシーベルトを下回っているので心配ないということなんですが、外国の例を紹介させていただきますと、2001年6月にフランス国立衛生医学研究所のスピラ教授は、再処理工場から10キロ以内において白血病発症率の上昇が認められるとし、急性リンパ性白血病の観察及び調査をラ・アーグ及び他の再処理工場周辺においてすべきであると結論づけています。
 イギリスでも、セラフィールド再処理工場による深刻な放射能汚染が広がり、政府が実施した未成年者の歯の分析調査でプルトニウムによる汚染がセラフィールドを中心に同心円状に、イギリス全国に及んでいることが判明したといいます。
 こういうイギリスやフランスでの再処理工場が長い間、本格稼働された中での周辺に白血病等の子供たちがふえているという現実について、県としてはどのように受けとめておられるのでしょうか。
◯工藤原子力安全対策課長
 委員御指摘のとおり、イギリス、フランスの再処理工場周辺で小児白血病の発生率が高くなったというような論文なり、報道なりが出されたということは、もちろん事実でございまして、これに対してそれぞれイギリス、フランスは、調査のための専門部会を設置いたしまして調査しております。イギリスにおきましては、1986年から2002年まで7回、委員会から報告書が出ております。それから、フランスのほうでも、1999年及び2002年に委員会のほうから報告書が出ておりまして、これらによりますと白血病の発生率の増加は見られるものの、いずれの報告書でも再処理工場からの放射性物質の放出や、それから父親が被爆した場合という、有意な関係というのは認められないという結論がされてございます。
◯安藤委員
 白血病はふえているけれども、関連性は確かではないということなわけですが、じゃ大丈夫だというふうに言えるかというと、決してそうではないわけです。やはり、子供を持つ母親、そしてこれから子供を産むであろう若い方たちは、特にこういう事態について、非常な危機感を持っているわけです。そういうことも含めて、県民の安全・安心を担保するためには、この施設は稼働してはならないものだということを、改めて強く感じております。県も、やっぱりそういう県民の思いをしっかりと受けとめて、政策を決断する必要があるというふうに考えています。
 次の質問ですが、アクティブ試験が長期化していることから、ガラス固化試験以外のアクティブ試験項目、2006年からアクティブ試験が始まっていますので、当初やられた試験項目について、改めて試験をし直すことも必要なのではないかと、単純に振り返るとそういうふうに考えるものですが、この点については、どのように考えておられるのでしょうか。
◯工藤原子力安全対策課長
 日本原燃株式会社によりますと、アクティブ試験は使用済燃料を用いてプルトニウムや核分裂生成物の取り扱いに係る再処理施設の安全機能や機器・設備の性能を確認するものであり、既に安全機能や性能等について、確認済みの試験を改めて実施することは考えていないということでございます。
◯安藤委員
 ある新聞にも、この辺を危惧されるという記事を見ました。アクティブ試験以前の通水試験が2001年から始まっていますし、化学試験は2002年から、ウラン試験は2004年から始めているわけです。
 この間、さまざまな法令が変わったり、実際に試験にかかわった人材もかわっているということもあるでしょうし、これだけ長期間試験が長引いているということで、今まで行ってきた試験についてもやり直す必要があるのではないかという意見があるということも、ぜひ知っていただきたいと思います。
 日本原燃のほうでは、それは必要ないと言っているようですが、どちらにしても県民の心配を受けるような長きにわたる試験、そして本格稼働が18回目の延期になっていて、それも今のままで行けば難しいだろうと言われる事態だということを、真っすぐに受けとめなければいけないと思っています。特に、知事が「安全なくして原子力なし」ということを繰り返しているわけですので、さまざまな角度から県民の安全ということを議論するならば、この本格稼働についても中止を求めることが本筋だということを、改めて述べさせていただいて、質問を終わります。