2012.7.20: 平成24年度農林水産委員会 抜粋 本文(質疑4)
 それから、次の質問ですけれども、先日、2007年から、合成農薬を一切散布せず、一昨年は2回、昨年は1回だけ食用の酢を散布し、園内2カ所に粘着板トラップを設置し、モモシンクイガなどの性フェロモン剤を置くなどした青森市浪岡のリンゴ園で病害がほとんど発生しない状態のリンゴが実り、未成熟リンゴとして収穫する寸前の畑を視察してまいりました。農家の方たちが農薬散布の労力と、そしてそのお金が多くかかるという状況の中で、有機農業にかける試験的な取り組みというのも一方であるわけです。
 そこで、有機農業の推進について伺いたいと思います。国では、有機農業の推進に関する法律を制定していますが、まずその内容について伺いたいと思います。
◯相馬食の安全・安心推進課長
 法律の内容についてお答えいたします。
 有機農業の推進に関する法律は、有機農業の発展を図ることを目的に平成18年12月15日に公布施行されたものです。
 その主な内容として、まず、有機農業について、化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと、また、遺伝子組み換え技術を利用しないことを基本に、農業生産に由来する環境への負荷をできるだけ低減した農業生産方法を用いて行われる農業と定義しております。
 また、有機農業を推進するに当たっての農業者等のあり方や消費者との連携などの基本理念、それから、国及び地方公共団体が果たすべき責務、さらには、具体的に推進するために国が基本方針を、そして都道府県が推進計画を策定することなど、加えて、それらを実現する上で必要となる施策、それらが盛り込まれています。
◯安藤委員
 実はこういう法律があるということは私自身ごく最近知ったのですけれども、この法律の中で、今答弁で触れられた部分があるわけですが、それに加えて、第4条では、国及び地方公共団体は、前条に定める基本理念にのっとり、有機農業の推進に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有するというふうに述べられています。そして、技術開発などの促進ということに関して、第9条で、国及び地方公共団体は、有機農業に関する技術の研究開発及びその成果の普及を促進するため、研究施設の整備、研究開発の成果に関する普及指導及び情報の提供その他の必要な施策を講ずるものとするとされているわけですが、こうした法律にのっとった県としての取り組み状況はどのようになっているのか伺いたいと思います。
◯相馬食の安全・安心推進課長
 県としての取り組みということですけれども、県では、平成19年12月に策定した日本一健康な土づくり推進プランを有機農業の推進に関する法律に規定する県の計画として位置づけ、有機農業の推進を図ってきました。この健康な土づくりについて、本年2月に後期推進プランを策定しておりますけれども、この後期プランにも有機農業の推進目標等を盛り込んでおります。
 県では、有機農業者に対する支援として、国と県、市町村が連携して10アール当たり8,000円の交付金を交付する環境保全型農業直接支援対策の周知、活用促進に取り組むほか、県内のトップレベルの有機農業実践者の協力を得ながら有機栽培などに取り組もうとする生産者を対象とした栽培技術研修会、それから生産圃場での情報交換会を開催し、技術の向上を図っております。ことしも、7月18日、それから24日ですけれども、生産圃場での情報交換会を開催しておりますし、することとしております。
 また、消費者の理解と関心の増進については、有機農産物等取り扱い店舗のPRや県ホームページでの取り扱い者の紹介などの広報活動に加え、消費者を対象とした産地見学会等の開催を通じて理解を深める取り組みを行っています。
 技術開発の促進については、県と、それから青森県産業技術センター等が提携しながら、化学合成農薬の使用を低減した妨害虫防除技術などについて研究を進めているところです。
◯安藤委員
 今お話しされたのは農業全般にわたる施策の展開の状況だと思うんですが、リンゴ栽培におけるこの法律に基づいた県の取り組みはどのようになっているのか伺います。
◯相馬食の安全・安心推進課長
 リンゴ栽培における県の取り組みということですけれども、先ほどお話しいたしました技術研修会ですとか、それから情報交換会、この中にもリンゴ生産者も入っております。また、PRですとか、それから生産者との交流会ですとか、そのような中にも同じくリンゴも入っております。
◯安藤委員
 それでは、県内における有機農業でのリンゴづくりの現状について伺いたいと思います。
 ◯相馬食の安全・安心推進課長
 県内における有機農業の取り組み状況について、総体的には把握しておりません。ただ、平成24年1月現在、JAS法に基づく基準を満たし、国の登録を受けた機関から認定を受けた有機JAS認定事業者、これは16事業者で、まず認定面積は295.8ヘクタールとなっております。これは有機農業全般の部分です。
 そのうち、リンゴで認定を取得している事業者は3事業者で、面積は8ヘクタールとなっております。
 ◯安藤委員
 弘前で、木村秋則さんの無農薬のリンゴで有名になっていますが、この木村秋則さんの生き方をテーマにした映画、「奇跡のリンゴ」というのがいよいよ来年全国上映されるということですが、例えばこういう木村秋則さんだとか、それから、冒頭私が畑を視察してきましたと言ってきたその畑は弘前大学の城田先生が研究されている畑ですが、こうした方たちのカウントというのは先ほど言ったこの3事業者の中に含まれているのかどうか伺います。
 ◯相馬食の安全・安心推進課長
 その3事業者には含まれておりません。
 安藤委員
 やはり消費者にとっては、安心・安全ということから言えば、できれば無農薬の農産物を、そしてまたリンゴなどについてもそうした需要というのが、例えばこういう映画なども通して広まっていくかと思います。
 それで、先ほどお答えいただいた、この法律にのっとったリンゴの有機栽培にかける農家の方たちの支援というものを、農家の方たちの自主的な、栽培方法を転換していくというその方向性によるわけですけれども、消費者のニーズに合った栽培方法というものを、こういう法律もあるということから大いに今後広めていくということも一方では必要ではないかと思っていますが、この辺について、今後の方向性というか、県の基本姿勢というか、そういうものを伺えればと思います。
 ◯西谷りんご果樹課長
 お答えします。
 通常栽培から化学合成農薬や化学肥料を原則使用しない有機栽培に移行した場合、収量や品質が安定するまでに多くの年数と労働力が必要ということになります。収量も少なくなることが知られておりまして、生産者自身がリスクを勘案の上取り組むことになります。このため、県としては、比較的取り組みやすい土づくりを基本とした化学農薬や化学肥料の使用を低減するリンゴづくりに取り組むというところでございます。
◯安藤委員
 全くの無農薬というのはなかなか難しく現実的には、それで生活を成り立たせるという意味からすれば難しさもあるというのが現実だと思うんですが、ぜひそうした研究も大いに深めていただいて、消費者のニーズに対応できる青森県のリンゴづくりという方向にもぜひ力を入れていただきたいと思っていますので、これを最後に要望して終わります。