2013.02.21: 平成24年度農林水産委員会 抜粋 本文(質疑3)
 次の質問に移ります。原子力発電所の温排水の影響について伺います。
 東通原子力発電所の温排水影響調査の内容及び結果について伺います。
◯山内水産振興課長
 県では、事業者であります東北電力株式会社とともに、東通原子力発電所の温排水が施設前面海域及び周辺海域に与える影響を把握するため、施設が稼働する前の平成15年度から2年間、水温観測などの事前調査を行い、施設が稼働した平成17年度からは温排水影響調査を行っております。
 この調査では、事業者が原子力施設の取水口及び放水口の水温調査を含めて、施設の周辺半径1キロメートルの前面海域を中心に19地点、そして、県が沖合約8キロメートルまでの16地点、合計35地点におきまして水温や塩分等の環境調査を実施しているほか、35地点のうち、事業者が6地点、県が2地点で魚の卵や、稚魚、動植物プランクトン等の生物調査も実施しています。
 これまでの調査の結果、温排水放水口から500メートル付近の放水口に近い調査点におきましては、表層で約1度の海水温の上昇が見られたほかは、温排水による影響は見られてはおりません。
 また、生物調査におきましても、温排水の排出前後で、魚の卵や稚魚、動植物プランクトンの出現状況に変化は見られておりません。
◯安藤委員
 原発の温排水の影響というのは、2度上がるというふうに一般的に言われていますが、今の報告によりますと、表層の部分で1度の上昇が見られたということでしたけれども、一般的に言われている2度上昇するということと、現実の1度という、その差というのはどういうところなのでしょうか。この調査の結果というのが東通原発の結果と捉えてよろしいものでしょうか。
◯山内水産振興課長
 ただいまの御発言の中で2度ということであったと思いますが、今回の東通原子力発電所の1度上昇というのは、平成17年度からの調査の中で1度上昇したというもので、そのときの海流とか暖流の勢力とか、それから気候とかさまざまな要因があって一般に言われている2度ということではないということが1つと、あと、低層のほうから放水しておりますので、海面まで上昇する間に2度上昇するのか1度上昇するのか、それは拡散の範囲によって少し変わってくると考えております。
◯安藤委員
 それでは、調査地点においては1度の上昇ということだけれども、それは海流だとかいろいろな条件でそうなったというふうに理解してよろしいということですね。そこを確認させてください。
◯山内水産振興課長
 そのとおりだと思います。
◯安藤委員
 魚の卵や稚魚などには余り影響はないというお話でしたけれども、この調査結果ではそういうことだということでしょうけれども、そのほかの漁獲の変化とか、それからその他の近海の昆布だとかそういうものに対する影響というのはどのように認識しておられるでしょうか。
◯山内水産振興課長
 ただいま申し上げましたとおり魚の卵や稚魚、動植物プランクトンの出現状況には影響がないと。そのほかの魚ということでございますが、県では、主要漁獲物動向調査ということで、サケ・マス類やイカやその他のヒラメとかさまざまな主要魚種の漁獲動向を平成15年あたりから調べておりますが、温排水による漁獲変動はこれまでは認められておりません。また、沿岸の昆布やアワビ、その他のウニ等につきましても、通常の親潮とか黒潮の影響で漁獲の変動はあった年もありますけれども、この温排水による変動というのはこれまでの調査では認められておりません。
◯安藤委員
 それでは次に、建設が進められている大間原子力発電所の温排水影響調査はどのようにするのか伺います。
◯山内水産振興課長
 大間原子力発電所につきましては、東日本大震災発生後、施設の耐震安全性の確認や国の原子力規制委員会が策定中の新安全基準への対応などのため、現在、施設の稼働開始時期は未定となっております。
 県といたしましては、今後の動向を注視し、稼働開始時期が決まった場合には、事業者の電源開発株式会社と連携しながら、施設周辺地域の漁業関係者の意見も踏まえまして温排水調査計画を策定し、事前調査及び温排水影響調査を行うこととしております。
◯安藤委員
 今お話しされたのは、今後の稼働がどうなるかということを踏まえて影響調査を計画していくということだと思うのですが、これまで青森県が、大間原発の建設に絡んだ温排水の対策といいますか、影響をどういうふうに見るかということで電源立地地域温排水対策事業というのをされているかと思うのですが、この調査について、その経緯と、それから調査の結果をどのように捉えておられるかということを伺います。
◯山内水産振興課長
 県では、大間の原子力発電所が稼働した場合に排出される温排水を有効活用するために、今、委員から御発言のとおり、電源立地地域温排水対策事業というものを行って、その一環として、基礎の調査といたしまして、昭和61年度から平成13年度まで、大間町や東通の海域及び陸上施設を利用いたしまして、魚類や海草類、ウニなどの調査や飼育試験を行ってまいりました。特に大間町では、ヒラメの中間育成試験や、クロソイ、ホシガレイなどの養殖試験を実施しており、養殖などが可能であることを確認しており、実際に温排水を活用した場合は、試験で得られた結果よりも高成長が見込まれるものと考えてございます。
◯安藤委員
 そういう調査結果を踏まえて、大間原発が稼働した際には温排水を活用した養殖をしようという、そういう計画になっているという理解でよろしいのですか。
 ◯山内水産振興課長
 大間の振興プランの中で今の種苗センター──大間町にございますが──そこではアワビの種苗を生産しております。現在50万個規模で生産しておりますが、将来温排水を活用した場合は100万個程度の規模を見込むという計画となってございます。その他の魚類についてはまだちょっと確認してございませんが、さまざまな温排水の熱を利用した養殖について、実際行う場合は、先ほどお答え申し上げたとおり、可能になるものと思います。
 ◯安藤委員
 温排水を活用した養殖ということを視野に入れているということですが、大間マグロだとか、それからウニ、アワビ、昆布などがとれる漁場なわけですけれども、こういうところへの温排水の影響というのが東通原発では出ていませんという先ほどの話でしたけれども、大間原発が稼働されたとした場合に、温排水によって今の豊かな漁場に変化が出るのではないかという危惧の声も大いにあるということですが、この辺について、もし御見解があったら伺いたいと思います。
 ◯山内水産振興課長
 電源開発株式会社が事前に行っている環境アセスメントでは、温排水の拡散範囲が1キロメートル以内という結果が出ております。その周辺地域の漁業等は、ごく一部の磯根漁業が行われているものと思いますが、沖合の大間マグロとかスルメイカの回遊、その他サケ・マスの回遊等については、今の拡散範囲から想定いたしますと影響はないものと考えております。
 ◯宝多水産局長
 ただいま、東通の事例を見て、1度の拡散範囲が非常に狭いところということで、全ての水産生物、魚卵等の生息や漁業には影響が見られていないということを申し上げました。もちろん大間も同じようにするわけであります。水産生物の生息、漁獲量には影響がないと思われますけれども、先ほど申しました温排水を利用した各種試験につきましては、海の中で行っても温度差がほとんどないと想定されるものですから、そういうことを地元で考えているのではなくて、原子力発電所の温排水を放出する際の海水温と放出水の水温差を7度以下にしなければいかんというものがあります。実際に放出されてしまうと、海水の容量に温排水が負けて、すぐ1度以下になってしまうのですけれども、そうではなくて、将来利用するとしたら、温排水を海に流す前に、この温排水を陸上で、もう少し温度の高い状況で利用するという地元の計画があり、それについて県も試験の支援をさせていただいていたということでございます。
 ◯安藤委員
 大間町がそういう思いで計画をしようということでしょうけれども、私の思いとしては、放射性物質の影響が出ないのだろうかという不安は持ちます。温排水を使うということでの魚への影響というのはどうなのかなという単純な思いですけれども、こういうふうな心配は特にしなくてよいのでしょうか。
 ◯山内水産振興課長
 全国でも、静岡とか富山のほうでも温排水、先ほど局長が申し上げましたとおり、温排水の温度差を利用した陸上養殖ということでさまざまな、マダイとかいろんな養殖をしてございます。外国におきましても温排水を利用した──例えば地下のパイプで老人ホームの床暖房に使うとか、スズキの養殖とかさまざまなことで温排水を利用した取り組みがなされております。
 大前提となるのは、放射能は微量でも漏れていないということになろうかと思いますが、それにつきましては、住民の方々は理解しており、特別温排水で養殖したものだからということで、そういうふうな影響があって値段が低いとかそういうことは、私のほうでは確認はしてございません。そういうようなものを養殖しながら、安全で大丈夫だということを宣伝していくことが大事かと思っております。
 ◯安藤委員
 大間原発が稼働されるかどうかというのは、今後の状況を見ないと断定はできないと思いますが、そういう温排水を使って養殖をして、その養殖の魚を県内外の人たちに食べてもらうという方向よりも、やはり放射能の心配のない海でとれた魚を大いに食べていただく、それがやっぱり県内外の方たち、消費者の方たちに安心を提供することではないかというふうに私は思います。
 私の思いを述べさせていただきまして、大間原発の温排水影響の2つ目の質問はそれで終わりまして、もう一つ、大間原発の温排水が陸奥湾の漁業に影響を与えないかということでの心配の声が寄せられています。特にホタテが海水の上昇によってさまざまな打撃があるということで、大間原発の温排水が影響しないだろうかという声が寄せられています。この点について質問いたします。
 ◯山内水産振興課長
 事業者である電源開発株式会社が行った大間原子力発電所建設の環境影響評価、いわゆる環境アセスメントでは、先ほど申し上げましたとおり、施設から出る温排水の影響によりまして海水温が1度上昇する範囲は、施設の放水口から半径約1キロメートルとされております。
 さらに、当発電所が建設されている場所は下北半島西側の最北端に位置し、陸奥湾の湾口部までは約40キロメートルあること、また、津軽暖流が津軽海峡の西から東に強く流れ、大間崎や尻屋崎を通過して太平洋へ流れ出ており、陸奥湾の漁業には影響を与えないものと考えてございます。
 ◯安藤委員
 影響を与えないという答弁でしたけれども、もし、大間原発が稼働するということになったとしたら、ぜひ調査はしていただきたいと思いますので、このことは要望したいと思います。
 ◯山内水産振興課長
 温排水の調査は、大間周辺で、事業者と同時に行うということにしてございます
 ◯安藤委員
 きょうは原発による温排水ということでの漁業への心配からの質問でしたけれども、ぜひ青森県の農水産物の安心・安全を提供するという観点から、その保証となる調査をしっかりと行っていただきたいということを再度申し上げまして、この質問は終わります。