2017年5月19日平成29年農林水産委員会

「りんご放任園について」

◯安藤委員

私からは、大きく4つ質問いたします。
最初は、リンゴ放任園についてです。つい先ごろ、5月17日付新聞でも、農林水産省が実施した2016年産リンゴの調査で、実際に果実を収穫できる園地面積をあらわす結果樹面積の本県分が1万9,900ヘクタールになり、2万ヘクタールを割るのは1970年産の統計開始以降初めてで、農業者の高齢化と担い手不足による園地の縮小傾向が浮き彫りになる結果と報じられています。全国でも一番のリンゴ生産地のこの状況の中で、さまざまな理由でリンゴ放任園もふえていると状況が大変危惧されているところです。
そこで、県内のリンゴ放任園の状況と発生防止対策についてお伺いいたします。

◯舘田りんご果樹課長

リンゴ放任園は、通常の栽培管理が全く行われていない園地であり、病害虫の防除対策を行っていないため、病害虫の発生源となって、周辺の園地のリンゴ生産に影響を及ぼすおそれがあることから、県では、毎年6月と12月に放任園の発生状況及び処理状況を調査しております。
直近の平成28年12月の調査においては、放任園の面積が25.7ヘクタールで、その前に行われた6月調査の22.7ヘクタールより3.0ヘクタール増加しています。これは5.7ヘクタールの放任園が伐採などの処理や耕作再開が行われた一方で、新たに8.7ヘクタールの放任園が発生したことによるものです。
県では、生産者の高齢化及び担い手が減少する中で、放任園の増加が懸念されることから、これまでも、市町村が行う放任樹の処理及び放任園の発生防止に向けた現地指導や広報活動などを支援し、発生防止に努めているところでございます。


◯安藤委員

県の発生防止のための取り組みが非常に重要だと思います。各市町村やりんご協会などとの連携も非常に重要かと思いますが、どのようになっているのでしょうか。

◯舘田りんご果樹課長

生産対策本部の各地方本部がございまして、その中でりんご協会や各市町村、JA等に入っていただきまして、こういう発生状況についても御協議していただいているところであります。先ほど言ったように、市町村につきましては、市町村が伐採したいというところには県のほうでも十分支援しているところでございますので、この取り組みを続けていきたいと考えております。


◯安藤委員

相談できる体制がある中で放任園をどうしたらいいかということも考えられるような状況であれば、次のステップに移るかと思うのですが、なかなかそういう対応もできない事態、例えば、耕作できる方が病気になったりとか、事態が急変するというような事例もあるかと思います。そういう方への周りからの働きかけも大変重要かと思うのですが、放任園に対する対策がどういうものになっているかについては、生産者の方に十分に知られていると言ってよろしいでしょうか。

◯舘田りんご果樹課長

先ほど言ったように、市町村、JA等でいろいろ指導していただいているところでございますので、委員がおっしゃるように、まだその意見が通っていないということがあれば、もう少し連携を強化して周知していきたいと考えております。


◯安藤委員

伐採費を軽減する県の事業があると聞いていますが、その軽減に対する補助を受けての対策を講じられている実績は、どういうものでしょうか。

◯舘田りんご果樹課長

昨年度、先ほど言った支援事業を活用した実績という形で説明いたしますと、平成28年度は弘前市で1.8ヘクタール、平川市で約1.1ヘクタール、南部町で1ヘクタールの合計3.9ヘクタールの放任園が伐採処理されたほか、青森市など12市町では、放任園の発生防止に向けた巡回指導等が実施されているところでございます。


◯安藤委員

なるたけ放任園にならないような、その前の段階での取り組みが必要ですが、どうしても続けられないという場合は、このような県の支援事業も活用しながら、きちんとした対応が進むように、今後とも対応方、そして、指導などについてもしっかりと進めていただきたいと思います。
次は、農地の有効活用の取り組みについてということで、今まで私の認識では、耕作放棄地という捉え方で認識していたのですが、耕作放棄地以外にも荒廃農地及び遊休農地という捉え方があるということを今回知りました。質問として、耕作放棄地、荒廃農地及び遊休農地の違いとそれぞれの現状についてお伺いしたいと思います。

◯赤平構造政策課長

遊休化している農地につきましては、調査方法や定義は異なりますが、耕作放棄地、荒廃農地、遊休農地の3種類がございます。いずれも現在耕作されていない、または十分に活用されていない状態にあるということは共通しております。
まず、調査方法の違いとしまして、耕作放棄地は、5年ごとの農林業センサスによって、再び作付する意思がないと農家自身が自己申告した面積であるのに対しまして、荒廃農地及び遊休農地は、市町村や農業委員会が現地調査をして確認して把握しているものでございます。
この荒廃農地と遊休農地の違いですが、荒廃農地には、森林化したような、そうした再生利用が著しく困難なものも含まれるのに対して、遊休農地は、再生利用が可能な農地というふうに整理されております。
それぞれの27年の面積は、耕作放棄地が約1万7,300ヘクタール、荒廃農地が約6,800ヘクタール、遊休農地が約4,500ヘクタールとなっております。
なお、耕作放棄地面積には、耕作可能な状態にあるものの作付していない、いわゆる不作付地が含まれますので、荒廃農地や遊休農地と比べて大きい数字になっているところでございます。


◯安藤委員

耕作放棄地の面積は、荒廃農地や遊休農地に比べて広さが大きいですよね。そうしますと、耕作放棄地においては、まだ農地として活用し得る農地も含まれているということなのですが、荒廃農地と遊休農地にも若干の開きがあるわけです。そこは調査の方法の違いということが反映されている結果なのでしょうか。

◯赤平構造政策課長

荒廃農地につきましては、先ほど答弁したように、森林化、森林の様を呈するなど再生困難なものも含まれているのが荒廃農地でございます。一方、遊休農地は、再生可能な荒廃農地の部分と、さらに、周辺の農地に比べて著しく利用状況が悪い、管理が悪い、肥培管理が行われていない、そういう面積も含まれます。したがいまして、荒廃農地が非常に再生が困難な大きな面積を含み、遊休農地のほうが小さい面積も含むという状況でございます。


◯安藤委員

まだ農地として活用できるところも含まれるということですので、遊休化している農地の活用に向けた対策についてお伺いします。

◯赤平構造政策課長

県では、遊休化している農地の再生とその活用を図るため、市町村と連携して、国の交付金事業の活用を農業者に促しております。伐採、抜根、整地等を支援しているほか、企業等の参入促進などにも取り組んでおります。
また、地域ぐるみの取り組みを促進するため、圃場整備事業の実施や担い手となる集落営農法人等の設立、国の直接支払交付金制度の活用や低コスト栽培技術の導入などを支援しております。
これに加えて、農業委員会等に関する法律の改正に伴いまして、遊休農地の発生防止・解消等の活動を行う農地利用最適化推進委員が、昨年度から順次、市町村農業委員会に設置されていますので、その活動が活発に行われるよう研修を充実させるとともに、農地中間管理事業の活用促進もあわせて、農地の有効利用対策を強化していくこととしております。


◯安藤委員

今、答弁の後段にありました、農業委員会の中に設置する農地利用最適化推進委員について、もう少し具体的にどのような仕事をされているか、県内でどのくらいの方たちがそういう仕事をされているか伺いたいと思います。

◯赤平構造政策課長

農地利用最適化推進委員というのは、これまで農業委員会法で農業委員を選挙、あるいは、選任によりまして選んでおりましたが、法律改正によりまして、農業委員のほかに市町村農業委員会が委嘱をするという形で、国の上限としましては、100ヘクタールに1名を限度にこの推進委員を置くことができるとされております。昨年度は10市町村が新しい体制に移行しておりまして、そのうち9市町村が農地利用最適化推進委員を置いています。本年度は32市町村にふえるということでございますので、その委員の方には「人・農地プラン」の現場の話し合いを促進する役割、それから、借りたい、貸したい、そのマッチングする役割、それから、遊休農地解消の活動などを役割として担っていただくことになっております。


◯安藤委員

青森県は農業が基幹産業ですので、しっかりと農地が活用されて、農業の後継者をどう育成していくかということも重要な課題だと思います。その辺については、またの機会に質問したいと思いますが、遊休化している農地をいかに活用させていくかという取り組みについては、今後もしっかりと取り組んでいただきたいと思います。
今の答弁の中にも少し出てきましたが、耕作できない人が農地を借りたいという人に橋渡しをするという仕事となる農地中間管理事業が進められていますが、次に、この質問に移りたいと思います。
日本共産党は、農地中間管理事業の推進に関する法律案が出されたときに反対をしています。主な3つの理由があるのですが、1つは、TPP対応の日本再興戦略として位置づけられて、農業構造の改革と生産コストの削減を強力に推進する手段としていること。第2の理由は、農地の番人として戦後から現在まで重要な役割を果たしている農業委員会を農地集積事業から事実上排除することを法律上規定した点。そして3つ目の理由は、優良農地において、大企業が主体の大規模農業生産法人への農地集中を進め、農村の解体や中山間地の荒廃を進展させかねないものである、こういう点が考えられるということで反対をしました。そういう立場ですが、この間の県の取り組みについて伺いたいと思います。
1点目は、農地中間管理事業の平成28年度の実績についてお伺いします。

◯赤平構造政策課長

平成28年度の農地中間管理事業による貸し付け実績は1,369ヘクタールとなり、前年度に比べると444ヘクタール減少し、農地中間管理機構の年間目標に対しては約3割にとどまっております。
また、事業がスタートした平成26年度以降の実績は、平成26年度が445ヘクタール、27年度が1,813ヘクタールで、それぞれの年間目標の4割程度となっております。


◯安藤委員

平成27年度、28年度の目標はどういう設定だったのか確認させていただきたいと思います。

◯赤平構造政策課長

平成26年度の目標につきましては、年度途中の初年度めということで、1,100ヘクタールの計画となっております。平成27年度につきましては、年度計画を4,600ヘクタールとしております。


◯安藤委員

それに対して、4割、3割という実績だということですが、平成28年度の実績の中で、企業からの応募数、農事組合法人や株式会社、有限会社などの応募数、その中でも大企業が主体の大規模農業生産法人への貸付状況がわかりましたら、伺いたいと思います。

◯赤平構造政策課長

平成28年度実績、1,369ヘクタールのうち、集落営農法人、それから、一戸一法人、いわゆる一般企業の法人も含めた法人トータルでの面積としては、408ヘクタール、全体の30%を占めています。そのうち、いわゆる一般企業につきましては、119ヘクタール、約9%に当たる実績となっています。応募数ということではなくて、実績ということでお答えさせていただきます。


◯安藤委員

法人化している生産者の方たちもいるという中での企業の応募実績ということかと思いますが、県内の各地の状況を見てみますと、三八と下北県民局の実績が特に低いかなと思います。その辺については、どういう理由が考えられるか伺いたいと思います。

◯赤平構造政策課長

三八地域及び下北地域につきましては、もともとの農地面積が少ないということ、それから、三八地域においては果樹が多く、労働集約的な部門ですので、中間管理事業を活用した貸借が進む状況にないということが要因と考えております。


◯安藤委員

平成28年度の目標を達成できなかった主な要因について伺います。

◯赤平構造政策課長

貸付実績が伸び悩んだ主な要因としては、事業活用のインセンティブとして用意されている機構集積協力金が昨年度に大幅に引き下げとなったことで、事業の促進効果が低下したことが大きいと考えております。また、農地中間管理事業よりも手続が簡単で特定の相手と貸借できる農地法等による貸借を選択する農業者が依然として多いこと等が挙げられると考えています。

「農地中間管理事業の推進に向けた今年度の取り組みについて」

◯安藤委員

そうした状況の中で、今後のことについてですが、農地中間管理事業の推進に向けた今年度の取り組みについて伺います。

◯赤平構造政策課長

県としては、機構集積協力金が減額される中にあっても、地域農業を維持・発展させていくためには、農地中間管理機構の農地再配分機能を発揮させながら、担い手への農地の集積・集約を急ぐ必要があり、集落段階の活動を強化していくことが重要であると考えております。
このため、国の支援制度の説明会など農業者が多く集まる機会を活用して集落の話し合いを促し、実効性の高い「人・農地プラン」の作成を誘導します。
また、地域において集積活動を担う農地利用最適化推進員の設置市町村が9市町村から32市町村に拡大しますので、新たに推進委員を設置する農業委員会ごとに実務研修会を開催するほか、地域の実情に応じて、大規模経営体や基盤整備地区への働きかけを強化していきます。
さらに、農地法等による貸借の更新時期を捉えて、公的な農地中間管理機構を通じた貸借への切りかえを誘導し、長期的に農地の有効利用が担保されるよう、農地中間管理事業の活用促進に努めてまいります。


◯安藤委員

農業委員会との関係を先ほども質問しましたが、農業委員会は効率的な農地利用について、農業者を代表して公正に審査する行政委員会であるわけです。農地中間管理機構は、農用地利用配分計画を作成する上で、市町村に対し、農地の保有や利用に関する情報提供のほか、計画案の提出を求めることができ、その際に市町村は必要に応じて農業委員会に意見を聞くとされてきましたが、この農業委員会の意見を聞くという状況について、どのようになっているか伺いたいと思います。

◯赤平構造政策課長

当事業における農業委員会の役割の一つとしてお答えいたしますと、機構におきましては、まず、地域内における農地の出し手と受け手の情報を正確に把握する。その中で農業委員会からも情報を把握しまして調整を行うことになっております。機構が受け手に農地を貸し付ける場合に作成する農地利用配分計画については、機構は市町村にその作成を求めることがありますが、市町村はその際に農業委員会の意見を聞くということになっております。


◯安藤委員

農業委員会の意見を聞くということはよくわかります。農業委員会の業務の一つに、農地の売買や貸借の許可というのがありますが、農業委員会のそもそもの業務と農地中間管理機構の仕事は一部、内容的にダブる部分もあるかと思いますが、農業委員会独自の業務状況と土地の貸し借り、あるいは、売買等にかかわっての業務の状況は、農地中間管理機構ができてからの推移についてはどのような状況か、数字的なことは今、いきなり質問で無理かと思いますが、傾向としておわかりになったら伺いたいと思います。

◯赤平構造政策課長

農地の動きの手法としまして、農地法によるもの、あと、市町村が公告によって認める農業経営基盤強化促進法によるもの、さらに、今般の農地中間管理事業によるもの、この3種類がございます。農業委員会には、農業者の方が農地の貸借等について相談に行くわけでございますが、農業委員会の立場としては、その農業者の立場に立って、期間の問題、相手方の問題、それから、地域の問題、それらを総合的に勘案して、どの手法による、どの法律に基づく貸借がいいかを判断し、助言、指導していくものと考えております。


◯安藤委員

農地中間管理機構の貸借が思うように進まないという一つの理由に、農業委員会が中に入っての貸し借りや売買のほうが相手が見えるということもあって、安心感があるというようなことも含まれて、農業委員会のほうの業務が安定的に推移しているのではないかなと想像するのですけれども、実際のところ、今までの農業委員会の土地にかかわる業務というのは、今までと大体同じような推移となっているのか、中間管理機構ができた後は、ぐっと少なくなっているのか、その辺、傾向で結構ですので伺えればと思います。

◯赤平構造政策課長

中間管理機構はほとんどが貸借のものでございますので、売買等につきましては、農業委員会のほうの実績がそのままという状況でございます。貸借につきましては、中間管理事業ができてまだ3年目でございますが、状態としては、それなりのシェアで、農業委員会でも、地域的には面的にまとまったほうがいいというものは中間管理機構に促しているところでございますが、先ほどの答弁でも申しましたように、依然として農地法等を選択する農業者が多い状況にあるということでございます。
県としましては、長期的に見た場合に、短期の特定の相手方の貸借というよりも、将来的なことを考えれば、中間管理機構を介した、10年という長期の貸借のほうに誘導していきたいと考えます。


◯安藤委員

いろいろな問題点もあって、農地中間管理事業というのは目標にはなかなか到達できない状況であるというのは数字的に明らかになっているのですが、いずれにしても、農地を有効活用して生産できる状況をつくっていくということは大変重要かと思いますので、その点では、生産者の意向を尊重しながら有効活用の道というのをしっかりと生産者の皆さんと検討をしながら、県としても適切なアドバイスをしていただきたいということを申し上げて、この質問は終わります。

◯岡元委員長

午さんのため暫時休憩いたします。なお、再開は午後1時といたします。

「環境公共について」

◯安藤委員

最後は、県として大変力を入れている環境公共についての質問になります。
最初に、環境公共の概念についてお伺したいと思います。

◯野中農村整備課長

農山漁村の豊かな自然や美しい景観、伝統的な風習・文化など、かけがけのない地域資源を将来に引き継いでいくためには、自立した農林水産業が営まれ、地域コミュニティが存続していることが不可欠です。
このため、県では「農林水産業を支えることは地域の環境を守ることにつながる」との観点から、農林水産業の生産基盤や農山漁村の生活環境などの整備を行う公共事業を「環境公共」と位置づけ、その基本的方向や実施手法などを定めた「あおもり環境公共推進基本方針」を策定しています。
この方針に基づき、地場の資源、技術、人材の活用を基本に、みずから考え実行していく「地域力の再生」、農業・林業・水産業の「より強固な連携」、環境への配慮から「環境への保全・再生へ」という3つの方向性で農林水産部の公共事業を進めているところです。


◯安藤委員

今までのさまざまな農業に関する公共事業が行われてきましたが、今回、環境公共という位置づけ、内容については伺いましたが、あえて環境公共とくくって事業を進めていく理由について、お伺いします。

◯野中農村整備課長

環境公共として取り組む理由ですけれども、それまでの公共事業については、事業の当事者と整備の事業主体、こちらのほうで話し合って整備を進めてきたといった経緯がございますけれども、今後の公共事業については、地域の方々と連携して、また、農業、林業、水産業それぞれ個別ではなく、その3つが連携することによって相乗効果も期待していく、そういった観点で進めているところです。


◯安藤委員

地域の方々の声を重視しながら連携して進めるということなのかなと理解しました。そこで、環境公共の県内での取り組み状況について伺います。

◯野中農村整備課長

本県独自の取り組みである「環境公共」は、平成21年度から28年度までに実施した農林水産部の公共事業394地区のうち、先ほど申し上げた3つの方向性のいずれかに取り組んでいる地区は全体の約9割に達するなど、着実に浸透してきています。
その具体例として、環境の保全・再生を図る取り組みでは、藤崎町の福島徳下地区で、「地区環境公共推進協議会」を中心に、ナマズの生息環境を再生・保全する水田魚道やビオトープを整備し、生き物観察や田植え、稲刈りなど地元小学生を対象として環境学習会を開催するなど、地域ぐるみの活動が展開されております。
また、農・林・水の連携を図る取り組みとして、今別町の安兵衛川に魚道を設置した安兵衛地区では、整備後、漁業協同組合と連携して魚の遡上調査や稚魚の放流を行ったほか、上流域の水源林で植林活動を実施しております。


◯安藤委員

今、事例を紹介していただきましたが、環境公共の特徴である地域の方たちとの連携ということで、地区環境公共推進協議会というものを設置しての取り組みというふうに聞いておりますが、この推進協議会が設置されている事業については、先ほど紹介された件数のうち、どのような状況になっているのか伺います。

◯野中農村整備課長

協議会が設置された地区につきましては、先ほど申し上げた394地区のうち208地区、割合にして大体半分ぐらいというふうになっております。


◯安藤委員

残りの地区には、今現在でもその協議会はできていないという理解でよろしいですか。

◯野中農村整備課長

残りの地区については、まだできていない状況でございます。


◯安藤委員

冒頭の答弁で、平成21年度から28年度という説明をされたのですが、この事業は、29年度以降も、今まだ協議会ができていないところは協議会をつくって事業を進めていくという考え方に立っているのでしょうか。

◯野中農村整備課長

先ほども申し上げた、協議会ができていないところですけれども、事業の中身によると、例えば、今回新たな施設をつくるという段階では、地域の方々のお話を伺いながら環境に配慮した設備をつくっていくというようなことで、協議会が設立しやすい、そういう状況がございます。一方で、既にできている水路を単純に補修する、直していくとか、そういった内容の事業については、なかなか協議会を立ち上げてまで地域で取り組んでいくのは難しい状況にございます。そういったこともございまして、3つのいずれのかの方法について取り組んでいくという目標を掲げておりまして、それは現在、大体9割ぐらい達成できている状況でございます。


◯安藤委員

そうしますと、今、協議会が設置されているのは約半数ぐらいだというお話だったかと思うのですが、その残る半数のところは、特に協議会を設置せずに工事というか取り組みを進めていくという理解でよろしいでしょうか。

◯野中農村整備課長

先ほど申し上げた394地区については半分の設立ということになっておりますけれども、これから実施していく事業については、できるだけ協議会を設立していって、地域の方々の意見を伺っていきたいと考えております。一方で、先ほど申し上げたとおり、事業の内容によって、地域の方々の意見を聞くことが難しいというようなものもございますので、そこは努力していくという姿勢でおります。


◯安藤委員

私の身近なところの環境公共として、後山地区環境公共というものがありまして、ちょくちょくその状況を見ているのですけれども、県の「環境公共アクションプラン」という冊子、これは26年2月につくっているものですけれども、この中にも「きれいな水をはぐくむ里地里山の保全・再生」ということで、後山地区の事例が紹介されています。ここは協議会を立ち上げて取り組みがされてきたと理解していますが、この事例の取り組みの状況について伺えればと思います。

◯野中農村整備課長

「環境公共アクションプラン」の中にある、「きれいな水をはぐくむ里地里山の保全・再生」につきましては、ため池の老朽化を踏まえて改修したいという地元からの要望がございまして、その地域において、環境公共の取り組みをモデル的に実施したということでございます。
そして、地域の協議会の中で、整備のあり方について議論していただいたところ、このため池の整備とあわせて、環境に配慮したホタル池を整備してほしいという要望もございまして、それを踏まえて事業を実施したということでございます。


◯安藤委員

そうしますと、この環境公共事業につきましては、ため池の整備事業と、それから、ホタル池の整備という、これを一体として環境公共事業と捉えてよろしいということでしょうか。

◯野中農村整備課長

この地域一体として、地域の協議会において、地域の整備のあり方の構想をつくっていただいております。その中にため池の整備、ホタル池の整備、両方ありますけれども、全体として環境公共の取り組みとしております。


◯安藤委員

先ほど言った「環境公共アクションプラン」の中に、イメージ図だと思うのですが、写真で紹介されています。ここの写真で紹介されている、その構想内容と、今既にできたホタル池の整備状況が異なっています。後山環境公共の事業が、協議会の話し合いも進んでいったのですが、途中でこの構想は中断というか、地域の方々にすると中断されたという捉え方をされた時期があります。そもそもこの環境公共というのは、地域の方と協議を進め、そして、連携をしていくという取り組みだと思うのですが、その協議をした状況でつくられた構想が途中で頓挫されたと地域の方は捉えています。そういうことがあったということを踏まえて伺いたいのですが、後山地区におけるホタル池の整備範囲が構想時点から変更となった理由についてお伺いします。

◯野中農村整備課長

ホタル池は、弘前市坂元にある後山ため池を改修する際に設立された後山地区環境公共推進協議会が、平成21年1月に、ため池周辺の将来像を描いた後山地区事業構想に位置づけたものです。
その構想には、地元要望として、自然環境に配慮したため池法面の改修に加え、ホタルが生息できる池の整備等が掲げられており、ホタル池の大まかな位置が示されております。これについては、先ほど委員が御指摘されたとおりです。
その後、平成23年度、協議会に対して、事業構想に基づく具体的な整備内容とその概算事業費を示し、事業費の1割を地元が負担することになる旨説明したところ、地元負担を抑えるために規模を縮小して、整備内容を見直したいとの意見が出されまして、協議会内部で再度検討した結果、現在のホタル池の形状となったものです。


◯安藤委員

整備に地元負担があるということで、地元からの要望で縮小になったということなのですね。協議会に参加している地元の方たちは、この構想が練られた以降、先ほども言いましたけれども、一時、事業が中断されて、そして後山地区環境公共推進協議会が市に陳情されたという経緯があると聞いています。その陳情をされた以降、多分、概算額が示されて話が進んでいったのかなと思うのですが、一時期中断したというそもそもの理由については、どう認識しているのでしょうか。

◯野中農村整備課長

当時の経緯につきましては、先ほど委員が示されたアクションプランの中に書かれているのですが、この中で読み取りますと、まず、ため池の整備に当たって、協議会で具体的な整備内容について意見を募って、また、地元で地域の環境の勉強会を開催した。その勉強を通じて地元の貴重な環境を守っていきたいという声が上がりまして、ホタル池の整備をしてほしい、したほうがいいといった意見が地元から出されております。ただ、その時点では、この整備に幾らかかるかとか、あとは、その事業を実施するに当たって地元の負担が幾らになるかとか、そういったことはまだ具体化できていない状況です。
その後、事業実施に向けてさまざまな方々の意見をいただきながら手続を進めていく中で、ある時期に具体的な事業費の内容と費用の負担割合というもの、あとは、それに係る概算の工事費がわかってきましたので、それを地元にお示ししたところ、先ほど申し上げたとおり、地元の負担がちょっと重過ぎるので事業内容を見直したり、規模を縮小してでも地元負担を抑えたいという声があったと認識しております。
一方で、先ほど委員から御質問のあった市役所への要望とか、そういったものについては、当時の経緯についてお答えできるほど今、私は承知してございません。


◯安藤委員

地元負担といいますと、それは市の負担と、それから、その地域のため池管理委員会でしたか、そういうところの負担を言っているのか、もし弘前市の負担ともかかわっていることになれば、そういう意味で、弘前市に陳情したということになるのかなと思うのですが、地元負担というのは、具体的にはどこがどのくらい負担をするということなのでしょうか。

◯野中農村整備課長

ホタル池の整備に当たっては、国の補助事業を活用しております。そして、国の補助事業につきましては、国の負担割合、そして、県の負担割合というものがガイドラインで示されております。そして、そのホタル池を整備した事業では、国が50%、県が25%になるものがございますので、残りについては、県以外のところで負担していただくことは決まっておりますけれども、残りの25%について、市と地元の方々がどう負担するかというのは、県のほうではお示しすることは基本的にはございません。市役所と地元との話し合いの中で決まったということでありますけれども、結果としましては、市役所が15%、そして、地元が10%、地元というのは市役所ではなくて、農家とか地域住民の方々が負担する割合というものが事業費の10%というふうなことになっております。


◯安藤委員

結果的には、弘前市が15%で地元が10%ということですので、その辺の市への交渉というか、そういう意味の陳情だったのだろうかなとお話を聞いて考えました。
それで、結果的には事業は縮小されまして、当初、構想の中にあった民地の活用がされなくなったという結果になっているのですが、その活用されなくなった民地、休耕地がため池の整備工事のときには、整備工事の過程でため池の泥を一時保管などの活用でその民有地を使ったという実態がありまして、結果、構想のとおりの広さのホタル池の事業ではなくなったので、その使われなくなった民有地が、耕作できるような土地でなくなってしまったということで、それで昨年、その民有地の所有者と県の話し合いもありまして、転作ができるようにという、そうした事業を進めてくださったという経緯だと思うのですが、その点については、県としてはどういう状況のもとで、もともと活用しようと思っていた民有地に対して整備を進めたのか、そこを少し確認させていただきたいと思います。

◯野中農村整備課長

今、委員が御質問された民有地でございます。これは当初の構想図を見ますと、その民有地も含めてホタル池を整備するような絵が構想の中に掲げられております。そして、先ほど申し上げたとおり、具体的な地元の負担額がわかった時点で、地元からの要請を受けて、そのおっしゃった民有地を外す形でホタル池を縮小して整備することになりました。そして、その民有地は、ため池の整備等も含めて、工事をするに当たっての仮置き場、資材の仮置き場等に使ったという実態があります。
昨年、委員からの御質問を受けて、各関係者に聞き取りをしましたところ、当時は、その民有地の地権者さんと、公共事業を実施していた県の担当者の口頭の了解で、そこに仮置きなどをしたと聞いております。
一方で、県が公共事業を実施する場合には、口頭での契約ではなくて、ある意味、書面での契約にすべきだったと考えておりまして、この点について、その地権者の方の相続人の方にはおわび申し上げたところであります。
そして、その相続人の方からの情報提供によりまして、当時、仮置きなど、その土地を使った際に土地の形状が変わってしまって水はけが悪くなったということを情報提供いただきましたので、今の相続人の方とお話し合いをさせていただきまして、昨年、そこを水はけをよくする工事をさせていただいたところでございます。これについては、昨年内に工事完了しまして、相続人の方には現地を確認していただいた上で了解いただいておりまして、ことしは作付できる状況になっていると伺っております。


◯安藤委員

私もつい先ごろも現地を見てきまして、耕している跡を見ましたので、水はけも良好なのかなと理解しています。
ただ一つ、ため池の整備工事のときに側溝が一部壊れてしまった状態がそのままになっているように見受けられます。その点についても、しっかりと対応をするべきではないかなと思うのですが、その点については、何かお考えはありますでしょうか。

◯野中農村整備課長

今、委員からは、ため池を整備した際に、側溝など既存の施設が壊れた。それで、それがそのままになっているのではないかというお話をいただきました。昨年来、県庁と、また地域の方々、そして、今、私が申し上げた相続人の方と、今回の整備のあり方についてお話をさせていただいたのですが、今のところ、ため池を整備したから側溝が壊れたということまでは、地域でもはっきりと言われておらず、現時点で地元の方々から、そういった県の工事が原因なのだから県が直すべきだという声は寄せられておりません。ただ、今、委員からそういったご指摘もありましたので、早速現地を確認して、また、地域の方からお話を伺って、もしできることがあれば、できるだけ誠意を持って対応したいと考えております。


◯安藤委員

よく調査をしていただいて、適切な対応をよろしくお願いします。
4点目の質問ですが、後山地区におけるため池及びホタル池の管理体制と費用負担についてお伺いします。規模が縮小されたとはいえ、ある程度の広さのホタル池が今、整備されています。それで、聞いたところによると、昨年のホタルが出る時期には若干の確認もされたということですので、今年度、ホタルが飛び交う時期にさらに地域の方たちの思いに応えられるホタル池となるように願っているわけですが、先ほど質問した管理体制と費用負担についての質問をしたいと思います。

◯野中農村整備課長

まず、ため池については、一般的に市町村や土地改良区が財産を所有しておりますが、一方で、見回りや草刈りなどの通常の維持管理は、ため池の受益者である地元農家が行います。後山ため池についても、弘前市が所有し、通常の維持管理は地元農家が自己負担で行っております。
ホタル池についても、県が整備した後、弘前市に譲与しておりますが、ホタル池は地元の要望で整備されていることから、弘前市と地元の後山地区環境公共推進協議会の話し合いにより、通常の維持管理については協議会が自己負担で行っております。


◯安藤委員

通常の維持管理については地元が負担するということですが、通常でない事態がもし発生したときには、県も関与するということなのですか。

◯野中農村整備課長

通常の管理と申し上げたのは、例えば、草刈りとか、あとは見回りとか、そういったものを申し上げております。一方で、草刈りとか簡易なものではなくて、もう少し大がかりな補修、例えば、施設の機能が維持できないほど崩れてしまうとか、そういった状況になったときに、それを直していくような管理については、県と市が相談して整備していくということになっております。


◯安藤委員

先ほど言った、最初の構想の図を見ますと、結構広々した駐車場が示されているのですが、今現在のホタル池に進入するところは、車どめがされているような状況だというのを先日確認してきたのですが、それは駐車場という概念で使わせないのか、あるいは、ホタルが飛び交う時期になったらそれを取り除くのか、もしおわかりになったら伺いたいと思います。

◯野中農村整備課長

今、委員が御指摘された車どめのようなものにつきましては、昨年度、このホタル池の周辺に二輪車で進入して走り回った跡がありまして、これは、場合によっては、人の危険に及ぶ可能性があるということで、二輪車が進入しないようにという目的で弘前市が設置した柵になります。


◯安藤委員

ホタルを見に行くのは夜ですので、子供たちだけで行くということは余り考えにくいことだし、大人と一緒に、かなり暗い農道を通っていきますので、車でということになるかと思います。そうしますと、車をきちんと置ける場所も必要だと、安全にその場所でホタルを楽しむためには適切な駐車スペースが必要かと思いますので、もちろん、バイクなどが自由に出入りできるようにするということも問題なのですが、その辺は適切な対応策を講じていただければと思っていますので、検討をよろしくお願いします。
最後の質問になりますが、後山ため池の転落防止などの安全対策についてです。後山ため池は、整備事業が完了して、本当に立派なため池になったわけですが、環境公共事業全体を見てみますと、ホタル池もできて、公園のような雰囲気の場所になっているのですが、一方で、ため池に入りづらいように丸太の柵ができていますが、子供たちだけで行った場合、簡単にくぐっていけるような状況です。それで、ここのため池で51年前に小学6年生が水難事故で亡くなるという痛ましい事故がありまして、その前の年にもおぼれた子供がいて、あやうく死亡するという事態になったそうです。ですから、その当時のことを知っている人たちは、今のような状況を、これで大丈夫だろうかと。また水難事故が起きはしないか、そういう心配の声もあります。ですので、この質問をさせていただきます。

◯野中農村整備課長

まず、後山のため池につきましては、県が整備をした際に、施設の機能の向上とあわせて転落防止柵を設置するなど、安全対策にも取り組んでおります。また、後山地区環境公共推進協議会では、ホタル池を訪問した人がため池に近寄らないよう侵入防止の看板を設置し、注意喚起をしております。ただ、柵を設置して看板を置けば安全確保できるというものではありませんので、県が地元の方と、また、市役所と連携して、やはり安全対策というものをソフトの面からも、地元の小学校とかにも声をかけて、ため池には近寄らない、中で遊ばないということについて、しっかりと周知していきたいと考えております。


◯安藤委員

農林水産省農村振興局防災課で、「ため池の安全対策事例集」というのを出しています。これを見せていただきましたら、やはりため池での事故を防ぐための適切な対応策をソフト面とハード面でしっかり行う事例がいろいろ書かれていました。今、答弁にあったように、ソフト面では、地元の小学校等に十分、近づかないようにという周知を子どもたちにするということが大前提かと思うのですが、ハード対策として、この事例集に、救助ロープとか、はい上がれるようにするための安全ネットとか安全のためのブロック、または、転落防止柵などというのが紹介されていました。この後山ため池は本当に大きなため池ですし、深さもかなりあるように思いますので、今の侵入防止柵だけではなくて、ここの事例集に掲げられたような対策も必要かと思うのですが、その辺の何かお考えがありましたら示していただければと思います。

◯野中農村整備課長

さらなる安全対策を講じていくべきではないか、特にハード面で講じるべきではないかというお話でございます。ため池もそうですし、ホタル池もそうですけれども、地元の限られた方々が使う施設を整備するに当たっては、どうしても地元の方々の負担というのが生じてしまいます。また、こういった整備については、我々、地元からの要望を受けて実施しているという経緯もありますので、今回の委員からの御指摘を踏まえまして、我々から地元に対して、さらなる安全対策を講じることについて提案しまして、地元の理解が得られましたら、整備について検討していきたいと考えております。


◯安藤委員

さらなる安全対策を講じられるように、ぜひ弘前市や地元と協議を進めていただきたいと思います。
これから話すのは御紹介なのですが、公園の雰囲気だということもあるかと思うのですが、ボートのエンジンを浮かばせて動かす訓練をされている人も中にはあるそうです。また、冬場も含めて、すぐ近くの久渡寺は狩猟禁止区域になっているけれども、後山地区はそれに該当していないので狩猟をする方もいるようで、ため池の土手の周辺に薬きょうなどが転がっているそうです。子供たちも今まで以上に行く場所になる可能性があるので、その狩猟を自由にできる地域にしておいていいのかということも、ぜひ問題提起をさせていただきたいと思います。
以上で終わります。

◯岡元委員長

ほかに質疑はありませんか。
[「なし」と呼ぶ者あり]
ないようでありますから、これをもって審査を終わります。
以上をもって農林水産委員会を終わります。